8月9日(土)に放映された予選Bリーグ二位決定戦のチーム永瀬「ウサギと亀」(永瀬拓矢九段、佐々木勇気八段、羽生善治九段)と、チーム天彦「ヘッドハンティング」(佐藤天彦九段、広瀬章人九段、増田康宏八段)戦を振り返る。2020年にABEMAトーナメントが団体戦になって以来、増田は永瀬の指名を受け続けていたが、今回はクジの結果佐藤が獲得。チーム永瀬のエースとして活躍をしてきた増田が、ついに永瀬の敵に回る展開となった。
第1局は羽生が意表の三間飛車を採用するが、増田が競り勝ってチーム天彦が白星発進となった。
【第2局 佐々木勇気八段─広瀬章人九段】
広瀬は意表の阪田流向かい飛車へ。序盤から力戦調で方針の難しい将棋となる。
【第1図は▲7七角まで】
力戦スタートから手数は第1図ですでに130手を超えている大熱戦だ。形勢は互角だが、ともに時間はほとんどない。ここから△8二玉▲5九歩△4八竜▲5八香△7二銀上と、互いに崩れない方針で終わりの見えない戦いになる。形勢は依然としていい勝負で熱戦が続くが、丁寧な方針を続けた佐々木が競り勝っている。
第2局で佐々木が勝ったものの、第3局、第4局とチーム天彦が連勝。第5局はこの日2度目のリーダー対決で、第3局を負けている永瀬としては、チーム的にも負けられない状況だ。
【第5局 佐藤天彦九段─永瀬拓矢九段】
今は振り飛車党の佐藤だが、この日は居飛車を連投中。力戦調の角換わりから、難解な局面が続いた。
【第2図は▲5三金まで】
中央の玉頭から攻め込み、先手が抜け出した局面だ。後手は勝負手を求められているが、△7八角と放り込んだ。これには控室の佐々木も「これは素晴らしい。こういう手が逆転を生む一着ですからね」と手を叩く。実戦は▲7八同金△同桂成▲5八玉△8七飛成▲3五桂△6四角とうまく攻防手でプレッシャーを掛けて、最後は先手玉をトン死に打ち取った。永瀬が逆転で2勝3敗として踏ん張る。
【第8局 増田康宏八段─永瀬拓矢九段】
チーム天彦が4勝3敗と追い込んだところで、誰もが期待していたカードがついに実現。角換わりから、増田は右玉に構える。
【第3図は▲6七桂まで】
形勢が微妙に揺れ動く熱戦となるが、ここは増田がチャンスを迎えている。裏から攻める△6九銀が厳しい。▲5六桂と馬の利きを止めたが、△7八銀打▲8八金打△6七銀成があり、ここで先手投了。王手なので成銀を取るしかないが、ヒモが外れてしまったので△5五馬と取られてしまう。増田がチームの勝利を決める5勝目をあげた。
優勝候補の一角と目されたチーム永瀬はまさかの敗退。アベマトーナメントでは上位の常連だったが、初の予選落ちとなった。チーム天彦はチーム名の通り「ヘッドハンティング」した増田の活躍で、本戦入りを決めた。
第1局 増田○─●羽生
第2局 広瀬●─○佐々木
第3局 佐藤○─●永瀬
第4局 増田○─●羽生
第5局 佐藤●─○永瀬
第6局 広瀬●─○佐々木
第7局 佐藤○─●羽生
第8局 増田○─●永瀬
【個人成績】
佐藤九段 2─1
広瀬九段 0─2
増田八段 3─0
永瀬九段 1─2
佐々木八段 2─0
羽生九段 0─3