8月2日(土)に放映された予選Aリーグ二位決定戦、チーム稲葉「サンライズ↖」(稲葉陽八段、上野裕寿五段、吉池隆真四段)対チーム菅井「振り飛車+渚」(菅井竜也八段、藤本渚六段、西田拓也六段)を振り返る。本戦進出を懸けた戦いだ。
第1局はチーム菅井の先手番で▲藤本-△上野戦となった。藤本は雁木に構え、上野は左美濃囲いで応じる。お互いに様子を探る展開となったが、藤本が戦機を機を見て仕掛け、そのまま主導権を握った。上野の猛追を振りきり、藤本が開幕戦を制した。続く第2局は▲吉池-△西田戦。西田が三間飛車に振ると、吉池は得意の右玉に囲った。
【第2局 ▲吉池隆真四段-△西田拓也五段戦】
【第1図は▲8八角まで】
第1図は角を7九からかわした局面。ここで西田は△3五歩▲同銀右△同角▲同銀△3六歩と鋭く踏み込んだ。以下▲4四銀△同銀の局面は、先手が飛車と角、後手が銀2枚と先手の駒得となっている。ただし、後手は美濃囲いの堅陣に加え、攻めが続く形のため、実戦的には後手が指しやすい展開に。西田は攻めを緩めず、左右挟撃の寄せを決めて快勝。チーム菅井は2連勝でリードを広げた。
第3局は▲菅井-△稲葉のリーダー対決となった。稲葉としては悪い流れを断ち切りたいところ。菅井は陽動振り飛車から中飛車に構えた。
【第3局 ▲菅井竜也八段-△稲葉陽八段戦】
【第2図は△4八歩成まで】
第2図は後手がと金を作った局面。菅井は▲4四銀と金取りをかけたが、後手玉は詰めろになっていない。ここで稲葉が指した△3六銀が好手。先手玉は△3八と▲同玉△4七金▲2九玉△3八銀▲1八玉△2七銀上成までの詰めろとなり、攻守が入れ替わった。菅井は▲4三銀成△同銀▲3一金△同角▲3三金△同桂▲同歩成△同玉▲3五飛△3四歩▲3六飛と手順を尽くして3六銀を取ったが、△5四歩が冷静の一着で、先手に速い攻めがない。以降は稲葉が豊富な持ち駒を生かして寄せきり、チーム成績を1勝2敗とした。 第4局は▲上野-△西田戦。西田の四間飛車に対し、上野は松尾流穴熊に組んだ。西田は穴熊の弱点である端攻めを敢行し、緩まず押しきった。第5局は▲藤本-△吉池戦。居飛車党である藤本は、意表を突く向かい飛車を採用した。対して吉池は居飛車で銀冠に組む。難解な形勢が続いたが、最後は藤本が制している。チーム菅井は4勝1敗とし、あと1勝で予選通過が決まる。
第6局は▲稲葉-△藤本戦。背水の陣となったチーム稲葉は、ここでリーダーの稲葉が登場。一方のチーム菅井は、藤本が志願して連闘となった。
【第6局 ▲稲葉陽八段-△藤本渚六段戦】
【第3図は△5六銀まで】
第3図は、飛車金交換ながら後手が銀冠に食いついている局面。ここで稲葉は▲3二桂成△同銀▲2四金!の勝負手を放つ。すさまじい踏み込みで、チーム稲葉の控室でも大いに沸いた。しかし、藤本は冷静だった。▲2四金以下、△同歩▲同歩△2七歩▲同飛△3一桂と正確に対応する。途中の△2七歩▲同飛がそつのない利かしで、飛車の横利きを消し、銀冠の守りを弱体化させた。その後は藤本がリードを広げて勝利。緩急自在な指し回しが光る一局となった。この結果、チーム菅井が5勝1敗とし、Aリーグ二位で予選通過を決めた。次回の放送は8月9日(土)に放送されるBリーグ二位決定戦、チーム天彦とチーム永瀬の対戦だ。どうぞお楽しみに。
【総合成績】
(第1局はチーム菅井の先手番)
第1局 藤本○-●上野
第2局 西田○-●吉池
第3局 菅井●-○稲葉
第4局 西田○-●上野
第5局 藤本○-●吉池
第6局 藤本○-●稲葉
【個人成績】
菅井八段0-1
西田六段2-0
藤本六段3-0
稲葉八段1-1
上野五段0-2
吉池四段0-2