ABEMAトーナメント2025もついに決勝だ。今回は8月23日(土)17時から生放送された、チーム藤井「詰将棋パラダイス」(藤井聡太竜王・名人、斎藤慎太郎八段、古賀悠聖六段)対チーム天彦「ヘッドハンティング」(佐藤天彦九段、広瀬章人九段、増田康宏八段)戦の模様をお伝えする。チーム藤井は第4回大会(2021年)以来の優勝、チーム天彦は初優勝をかけた戦いだ。
第1局はチーム天彦の先手番で、▲増田-△斎藤戦となった。戦型は角換わりで、斎藤は右玉で待機策をとる。長い序盤戦が続くなか、増田は端攻めから打開して主導権を握り、そのまま押しきった。続く第2局は▲藤井-△佐藤戦のリーダー対決。初手から▲2六歩△3二銀▲7六歩△4四歩と進み、佐藤が趣向を凝らす。駆け引きのすえ、角道を開けない四間飛車に振った。激しい攻め合いとなったが、藤井が佐藤の猛攻をかわして制した。第3局は▲広瀬-△古賀戦。これで両チームの全員が出揃う。戦型は相居飛車となり、広瀬は矢倉、古賀は雁木に組んだ。
【第3局 ▲広瀬章人九段-△古賀悠聖六段戦】
【第1図は▲8三角成まで】
第1図は最終盤の攻め合いで、後手に手番が回ってきた。古賀は先手玉の詰みを見逃さず、△5九飛▲6九歩△6七桂▲8九玉△6九飛成▲7九香△同桂成▲同角△9八銀!と進み、広瀬が投了を告げた。△9八銀が退路封鎖の捨て駒で、以下▲同香△8八歩▲同金△9九金▲同玉△7九竜▲8九金△8八桂成までの詰みとなる。古賀は控室に戻ると「詰将棋、意味ありました!」といい、チーム全員が笑顔を見せた。これでチーム藤井は2勝1敗と勝ち越す。
第4局は▲斎藤-△増田戦。戦型は角換わり相早繰り銀となり、1局目とは対照的に居玉のまま戦いが始まった。増田は低い陣形を生かし、飛車交換から一方的に竜を作ると、最後は素早く寄せきった。第5局は▲広瀬-△古賀戦。第3局に続き、矢倉対雁木の構えとなる。広瀬は角銀交換の駒損ながら相手玉を薄くすると、最後は飛車を切る寄せを決めた。第6局は▲藤井-△佐藤戦で、再びリーダー対決。戦型は佐藤の四間飛車で持久戦模様となった。
【第6局 ▲藤井聡太竜王・名人-△佐藤天彦九段戦】
【第2図は△7二金打まで】
第2図は▲6四竜と逃げる手もあったが、藤井の指した▲7二同竜が妥協を許さない鋭い踏み込みだった。以下△7二同金▲7三歩△同金▲7四歩と進み、金頭のたたきが厳しく後手の受けが難しい。△7四同金には▲8三銀、△7二金には▲7三銀で、後手玉への詰めろが続く。実戦は△7六歩▲7三歩成△4二飛▲9一金△同玉▲8三桂で佐藤の投了となった。これでチーム成績は3勝3敗のタイに戻る。
第7局は▲増田-△古賀戦。古賀は3局連続の雁木、増田は矢倉を採用した。増田は早い段階で戦いを起こして主導権を握り、あっという間に受けなしに追い込んだ。増田は個人3連勝で、チームは4勝3敗でリーチをかける。
第8局は追い込まれたチーム藤井はリーダーの藤井を出陣。チーム天彦も佐藤を投入し、3局連続のリーダー対決となった。チーム天彦の作戦会議で広瀬が「藤井さんと後手3連発はなかなか指せないよ」と漏らすと、佐藤も「確かに......」と苦笑いした。戦型は佐藤の角交換振り飛車。藤井は7筋位取りの持久戦に構え、佐藤の仕掛けにうまく対応した藤井がリードを広げて勝利。これで4勝4敗となり、勝負は広瀬-斎藤の最終局にゆだねられた。緊張感のある雰囲気のなか、戦型は相掛かりとなった。
【第9局 ▲広瀬章人九段-△斎藤慎太郎八段戦】
【第3図は▲4一角まで】
第3図は広瀬が敵陣に角を打ち、後手玉に▲1四金からの詰めろをかけた局面。ここで△3二桂と打てば後手よしだった。▲3二同成桂が詰めろではなく、△7九飛成▲2一成桂△6九角▲4九玉△5九飛▲同玉△4七角成が一例で先手玉は詰み。だが本譜は△1四角と受けたため、▲同角成△同玉▲3三成桂△1三飛▲4一角の王手が厳しく、攻めの速度が逆転。実戦は斎藤が辛抱強く粘り入玉したが、広瀬が追い返して即詰みに仕留めた。これでチーム天彦の5勝4敗で優勝を決めた。
佐藤は「仲間が頑張ってくれて、私も全幅の信頼を置いていました。本当にいいチームだったなと思います。胸を張って優勝を喜びたいと思います」と振り返り、笑顔を見せた。
Abemaトーナメント2025は予選から決勝までちょうど100局行われ、団体戦ならではのドラマも随所に見られた。アツい戦いはチーム天彦の初優勝で幕を閉じた。
【総合成績】
(第1局はチーム天彦の先手番。以下は第8局まで交互、第9局はチーム天彦の先手番)
第1局 増田〇-●斎藤
第2局 佐藤●-〇藤井
第3局 広瀬●-〇古賀
第4局 増田〇-●斎藤
第5局 広瀬〇-●古賀
第6局 佐藤●-〇藤井
第7局 増田〇-●古賀
第8局 佐藤●-〇藤井
第9局 広瀬〇-●斎藤
総合 5勝-4勝
【個人成績】
佐藤九段 0-3
広瀬九段 2-1
増田八段 3-0
藤井竜王・名人 3-0
斎藤八段 0-3
古賀六段 1-2
【個人賞】
・最多勝 増田康宏八段(12勝)
・最高勝率賞 藤井聡太竜王・名人(10勝1敗、0.909)
・最多対局賞 増田康宏八段(14局)
・予選最高成績賞 増田康宏八段(8勝1敗)
・敢闘賞 吉池隆真四段(2勝2敗、0.500)