「ヘッドハンティング」VS「新しいリーダーズ」 ABEMAトーナメント2025~予選Bリーグ二位決定一回戦振り返り~

 7月12日(土)に放映された予選Bリーグ二位決定一回戦、チーム天彦「ヘッドハンティング」(佐藤天彦九段、広瀬章人九段、増田康宏八段)対チームエントリー「新しいリーダーズ」(宮嶋健太四段、山崎隆之九段、村田顕弘六段)を振り返る。敗れると予選敗退が決まるため、両チームにとって負けられない一戦となった。
 第1局はチームエントリーの先手番で▲山崎-△増田戦となる。山崎九段がひねり飛車を採用して主導権を握ったが、終盤で増田八段が巧みに切り返し、逆転勝ちを収めた。続く第2局は▲佐藤-△村田戦で、佐藤が右玉に構える。中央をめぐる攻防戦となったが、村田が押しきって勝利した。第3局は▲宮嶋-△広瀬戦となり、これで全員が1回ずつ登場する形に。宮嶋の早繰り銀に対して、広瀬は銀矢倉で対抗した。

【第3局 ▲宮嶋健太四段-△広瀬章人九段戦】

【第1図は△2四同銀まで】

 第1図は2四の地点で銀桂交換となった局面。ここで▲5四歩と突いたのが感触のよい一着。攻めの拠点を築きつつ、▲5五角の王手飛車取りを見据えている。広瀬は「敵の打ちたいところに打て」の格言に沿って△5五角と自ら打ち込んだが、▲5八飛△1九角成▲5三歩成と手順にと金を作った宮嶋がリードを広げ、そのまま手堅く勝ちきった。この結果、チーム成績は2勝1敗となり、チームエントリーが白星先行する展開となった。
 第4局は▲増田-△村田戦。増田の矢倉に対して、村田は居角左美濃囲いを採用した。お互いにじっくりと守りを固めた後、増田が飛車先に歩を合わせた機敏な動きで主導権を握る。村田の猛追もあったが、増田が振りきっての勝利を収めた。第5局は▲宮嶋-△佐藤戦のリーダー対決に。佐藤の得意戦法である横歩取りに対して、宮嶋は正面から堂々と応じた。佐藤が攻め続ける展開となったが、宮嶋は粘り強く受けて持ち駒を増やしていき、最後は即詰みに討ち取った。

【第6局 ▲広瀬章人九段-△山崎隆之九段戦】

【第2図は△6五桂まで】

 ここまでチーム天彦は2勝3敗と苦しい星取り。追い込まれた状況で白羽の矢が立ったのは、広瀬九段だった。一方、チームエントリーは山崎九段を起用する。山崎のダイレクト向かい飛車から四間飛車に振り直し、手損を承知で穏やかな流れに持ち込んだ。対して、広瀬は銀冠の堅さを生かして攻め込んでいく。
 第2図は終盤戦となっており、山崎が△6五桂とただ捨ての勝負手を放った局面。▲6五同歩は角道が通ってしまい、△6七金の張りつきがうるさい攻めとなる。実戦は▲7八銀△7七桂成▲同玉△8五歩▲8七玉と進行。広瀬の▲7八銀が冷静な受けで、上部の脱出ルートを確保したのが大きかった。最終的に広瀬は9五まで玉を逃がして安全勝ちを収めた。

【第7局 ▲宮嶋健太四段-△増田康宏八段戦】

【第3図は▲6二銀不成まで】

 チーム成績は3勝3敗と互角に並び、迎えた第7局は▲宮嶋-△増田戦。勝てば相手をカド番に追い込める大きな一番だ。戦型は角換わり相早繰り銀で、ノーガードの攻め合いに突入した。
 第3図は▲6二銀不成で金を取った局面。ここで先手玉への寄せ筋は複数あるが、△7七歩が急所のたたき。歩を取らせることで攻めの勢いを加速させる狙いがある。実戦は▲7七同金△8五桂▲6七金△6六銀▲同金△7七銀と進み、王手金取りが決まって、増田の鋭い寄せが炸裂した。
 続く第8局は▲佐藤-△山崎戦。山崎の右玉に対して、佐藤は矢倉から手厚い攻めの態勢を築き、そのまま押しきって勝利。リーダーの貫録を示す一局となった。この結果、チーム天彦が5勝3敗で勝利を決めて、予選突破へ望みをつないだ。次回の放送は7月19日(土)に放送される予選Aリーグ一位決定戦、チーム豊島とチーム稲葉の対戦だ。どうぞお楽しみに。

【総合成績】
(第1局はチームエントリーの先手番)
第1局 山崎●-〇増田
第2局 佐藤●-〇村田
第3局 宮嶋〇-●広瀬
第4局 増田〇-●村田
第5局 宮嶋〇-●佐藤
第6局 広瀬〇-●山崎
第7局 宮嶋●-〇増田
第8局 佐藤〇-●山崎

【個人成績】
佐藤九段1-2
広瀬九段1-1
増田八段3-0
宮嶋四段2-1
山崎九段0-3
村田七段1-1

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