棋聖戦五番勝負は杉本和陽六段の初挑戦を跳ね返し、藤井聡太棋聖が3連勝で防衛。通算30期目のタイトル獲得となりました。女流王位戦ではフルセットの激闘を福間香奈女流王位が制し、64期目のタイトルと、どちらも記録を伸ばし続けています。
ヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第3局
【第1図は▲2二銀まで】
第1図はヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第3局(▲杉本和陽六段△藤井聡太棋聖)。この▲2二銀は「玉の腹から銀を打て」の基本の寄せで、▲2一銀不成△1三玉▲2五桂までの詰めろ。部分的に受けが難しく、一見先手が勝ちのようですが、藤井棋聖は好手を用意していました。実戦は△2七銀まで先手の投了。▲同金は△同桂成▲同玉△3五桂▲3六玉△2七銀▲2五玉△3四金打▲1四玉に△1三歩が打てて、▲同銀成△同角で後手勝ち。△2七銀に▲1七玉とかわすのも、△3三桂が受けの妙手で、後手玉は寄りません。終盤の妙技を見せた藤井棋聖が3連勝での防衛です。
写真:琵琶
ヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第2局
【第2図は△5八角まで】
第2図は棋聖戦第2局(▲藤井棋聖△杉本六段)。序盤から着実に差を広げ、居飛車が勝ちへと近付いている終盤です。▲6六桂が「桂は控えて打て」の決め手。次の▲7四桂を防ぐ術がなく、攻め合いを望める形でもありません。この手を見て後手の投了となりました。
写真:翔
第36期女流王位戦五番勝負第5局
【第3図は△3三角まで】
第3図は第36期女流王位戦五番勝負第5局(▲福間香奈女流王位△伊藤沙恵女流四段)。フルセットとなった五番勝負で、難解なねじり合いが続いています。この王手にどう対応するかですが、▲6六歩△同歩▲5五歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△同角なら▲6六銀と角に当てて受けることができます。実戦は△5五同歩と応じ、▲8五銀△5六歩で難解な勝負が続きました。以下の終盤を競り勝った福間女流王位が7連覇となりました。
写真:紋蛇
第38期竜王戦決勝トーナメント
【第4図は△4三金まで】
第4図は第38期竜王戦決勝トーナメント(▲谷合廣紀四段△山下数毅三段)。決勝トーナメントの開幕戦です。玉形の差で振り飛車ペースの戦いです。▲7一角が厳しい攻め。△7二飛は▲5三角成△同金▲3四歩です。実戦は△5二飛ですが、▲5三角成△同飛▲4四銀△同金▲同歩と金をはがしました。「玉飛接近すべからず」の形で、さらに桂頭も狙われており、後手はまとめきれない形です。奨励会員として活躍した山下三段でしたが、本局は不本意な内容に。来期は棋士として4組での活躍に期待しましょう。
写真:牛蒡
大山名人杯第33期倉敷藤花戦
【第5図は△6四同銀まで】
第5図は大山名人杯第33期倉敷藤花戦(▲大城千花アマ△渡部愛女流四段)。中盤戦ですが、手番の先手が手を作れそうな局面です。▲7二歩が持ち歩を生かした手筋。△同飛に▲8三角△6二飛▲7二歩△6一飛▲7四角成で馬を作ることに成功しました。以下△7三銀▲6五馬△6四歩▲7六馬で押し返されましたが、「馬は自陣に引け」の通り先手十分の展開です。以下も先手が好調に指し手を重ね、タイトル挑戦も決めている実力者に快勝となりました。大城アマはこれでベスト8の快挙です。
写真:銀杏