新年度になり、名人戦、叡王戦の番勝負が始まりました。フルセットの激闘になった女流名人戦は終わりましたが、マイナビ女子オープンでも同じカードが続きます。
第83期名人戦七番勝負第1局
【第1図は▲6九玉まで】
第1図は第83期名人戦七番勝負第1局(▲永瀬拓矢九段△藤井聡太名人)。後手が勝ちに近付いている終盤戦で、ここは△7七角成と飛車を取る手が自玉の安全も図る自然な指し手に見えます。しかし実戦は△6八金▲同玉△7七角成▲5八玉△6八飛▲4七玉△4八飛成▲同玉△6六馬から、先手玉を一気に即詰みへと討ち取ってしまいました。「長い詰みより短い必至」の格言は、詰まし損ねると駒を渡したり、玉を逃がして逆転してしまうことを意味しますが、藤井名人には当てはまらないようです。
写真:紋蛇
第10期叡王戦五番勝負第1局
【第2図は▲4七同金まで】
第2図は第10期叡王戦五番勝負第1局(▲伊藤匠叡王△斎藤慎太郎八段)。いよいよ寄せ合いに突入する終盤戦。△7七香が「要の金を狙え」の自然な攻め。▲7九歩と受けさせて壁にしてから、△1七歩成と反対から攻めます。以下は先手の反撃を見切り、斎藤八段が開幕戦を制しました。
写真:銀杏
岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第4局
【第3図は▲2七香まで】
第3図は岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第4局(▲福間香奈女流名人△西山朋佳女流三冠)。後手がうまく攻めをつないで優勢になりました。ただし、先手に入玉を狙われると紛れてしまいます。△1七香成が「玉は下段に落とせ」の寄せ。香を成っておけば△1八竜の筋が厳しいため、▲1五玉では逃げ切れません。実戦は▲1七同玉△1五歩▲2六玉△1六金▲3六玉△3五歩▲4七玉△2七金と先手玉を押し戻し、後手勝勢となりました。
写真:八雲
岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第5局
【第4図は△8四玉まで】
第4図は女流名人戦第5局(▲福間女流名人△西山女流三冠)。先手が勝勢に近い状況ですが、後手も必死の粘りを見せています。▲9六歩△8六歩▲6三角△7四角▲同角成△同玉▲4一角△5二金▲9四銀が「玉は包むように寄せよ」の落ち着いた勝ち方。上部脱出さえ防げば先手の負けはありません。2連勝から2連敗と悪い流れでしたが、福間女流名人が防衛に成功しました。
写真:夏芽
第18期マイナビ女子オープン五番勝負第1局
【第5図は▲3四桂まで】
第5図は第18期マイナビ女子オープン五番勝負第1局(▲福間香奈女流五冠△西山朋佳女王)。後手がかなり苦しい将棋でしたが、勝負手を連発して混戦に持ち込みました。△7一香が粘り強い受け。▲9二飛に△5二玉が「玉の早逃げ八手の得」で、後手玉は寄りにくい格好です。以下は△5七角成からの寄せが間に合う展開となり、西山女王の逆転勝ちとなりました。続く第2局は挑戦者が制して、五番勝負は1勝1敗となっています。
写真:琵琶