藤井聡太棋王に増田康宏八段が挑戦した第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負。増田は待望の大舞台初登場だ。
第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局
第1局は高知県高知市「文化プラザかるぽーと」にて。藤井が先手で角換わりから、増田の誘導で珍しい形になる。
【第1図は△6五桂まで】
難解な戦いから藤井がわずかに抜け出しリード。後手は角の利きに勝負を懸けている。7七から突破されてはいけないので何か受ける必要のある局面だが、▲6六桂△5四桂▲6三歩成△同金▲6七歩がしっかりした受け。攻めの拠点がなくなるが、ここさえ受け止めてしまえば確実な攻めでも十分間に合う。以下も藤井が落ち着いた指し回しで、開幕戦を制した。
写真:武蔵
第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局
第2局は石川県金沢市「北國新聞会館」にて。序盤の駆け引きから、お互いに雁木模様の力将棋となる。難解な局面が続き、互いに残り時間がほとんどなくなっても、まだ終わりの見えない戦いが続く。
【第2図は▲6五桂まで】
図はようやく後手が抜け出したところだ。△3一玉▲4二歩成△2一玉で後手玉が寄らない形に。▲7三桂成に△4五角が急所のラインで、後手の攻め合い勝ちが明らかになった。藤井が2連勝で防衛まであと1勝と迫る。
写真:八雲
第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局
第3局は新潟県新潟市「新潟グランドホテル」にて。角換わり腰掛け銀から、後手の増田が研究十分の展開となり、持ち時間に差がついていく。
【第3図は▲5七金まで】
先手の主張は馬の存在なので、△4四角と合わせて消しにいく。以下▲同馬△同飛▲7一角△4一飛▲2六角成△4四角......で千日手となった。持ち時間に1時間以上差を付けて先手を手にしたのは増田にとってアドバンテージだ。
写真:文
第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局 指し直し局
30分の休憩後、指し直しへ。駆け引きの末に藤井の雁木、増田の矢倉に。堅陣を生かした増田が攻め切るかの将棋となった。薄い玉で収集困難に見えたが、藤井は正確な指し手を重ねてピンチをしのぐ。
【第4図は▲6九歩まで】
飛車の王手を先受けして4五の金取りを見せたところ。△4八飛が攻防手で▲7三銀不成に△8六歩▲6二銀不成△5九飛成▲5八金打△同竜▲同金△8七銀と強く踏み込む。後手玉も危険な形だが、わずかに後手の攻め合い勝ちだ。藤井が終盤で正確な指し回しを見せて、薄い玉で局面をうまくまとめきった。
写真:文
藤井は3連勝で棋王3連覇を果たした。通算27期目のタイトルになり、谷川浩司十七世名人と並ぶ歴代5位の記録となった。敗れた増田だが、内容はいずれも接戦だった。藤井と大舞台で再び戦う日は遠くないだろう。