藤井がダブル防衛 3月上旬の注目対局を格言で振り返る

 棋王、王将と連続防衛を果たした藤井聡太竜王・名人は早くもタイトル獲得数が歴代5位に。休場明けの福間香奈女流王座も防衛し、タイトルホルダー側が強さを見せています。

ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第5局

【第1図は▲6六歩まで】

 第1図はALSOK杯第74期王将戦七番勝負第5局(▲永瀬拓矢九段△藤井聡太王将)。藤井王将が意表の2手目△3四歩から雁木を採用したことで話題になった本局。△8六歩▲同歩△同飛でポイントを稼ぎにいきます。「飛車先交換3つの得あり」で、一歩手にしながら駒の働きを良くしました。その瞬間に先手から何かあると大変ですが、▲8七歩と打つくらいで△8一飛と手順に下段飛車の形を作ることもできました。後手が少しずつリードを広げて快勝し、藤井王将が4勝1敗で防衛を果たしました。28期目のタイトル獲得で、谷川浩司十七世名人の記録を抜いて歴代5位となっています。


写真:八雲

第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

【第2図は▲5八同金まで】

 第2図は第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局(▲増田康宏八段△藤井聡太棋王)。本局は千日手指し直し局です。先手の猛攻が続いていましたが、藤井棋王はうまくバランスを保って崩れません。△8七銀が「要の金を狙え」の決め手。代えて△5八同飛成では▲4五馬が攻防手になるところです。玉のそばの金を狙い、王手が掛かる形にするのが終盤のセオリーで、以下は後手が押し切っています。熱戦続きのシリーズでしたが、終盤で競り勝った藤井棋王が3連勝で防衛となりました。


写真:文

リコー杯第14期女流王座戦五番勝負第3局

【第3図は△7五同歩まで】

 第3図はリコー杯第14期女流王座戦五番勝負第3局(▲福間香奈女流王座△西山朋佳女流三冠)。歩を突き捨てて攻め筋を広げたところです。▲8六桂が「桂は控えて打て」の厳しい攻め。△7三角の受けにも▲5五歩△同歩▲9五香△同角▲9四歩と厳しく攻め立て、先手が好調の攻めです。終盤でもつれたものの逆転には至らず、先手が制勝。福間女流王座は休場のブランクを感じさせない強さで、3連勝で防衛となりました。


写真:琵琶

岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第1局

【第4図は▲3四角まで】

 第4図は岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第1局(▲西山朋佳女流三冠△福間香奈女流名人)。後手としては8筋をうまく収めないと危険な局面です。△2四飛▲6七角△9三銀▲8五歩△同歩▲9五香に△5五歩が「飛車は十字に使え」の活用。飛車の横利きを通し、一気に潰れる心配はなくなりました。


写真:潤

第83期A級順位戦プレーオフ

【第5図は△4六角まで】

 第5図は第83期A級順位戦プレーオフ(▲永瀬拓矢九段△佐藤天彦九段)。形勢が微妙に揺れ動いていましたが、ここは後手が勝ちに近付いています。先手は指す手が難しそうですが、▲8八玉が「玉の早逃げ八手の得」の粘り。△6八と▲同銀△同角成に▲7八金と埋めます。そこで△7九馬なら後手の勝ち筋でしたが、実戦は△4六馬としたために▲5三桂から先手の逆転勝ちとなりました。プレーオフを制した永瀬九段が名人戦初登場です。


写真:常盤秀樹

第18期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦

【第6図は△4四香まで】

 第6図は第18期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦(▲福間香奈女流五冠△加藤桃子女流四段)。先手玉はまだ安全ですが、△7七とで桂が入ると王手が掛かる形になります。5四の銀取りにもなっていますが、▲4二竜△同銀▲5二金が「終盤は駒の損得よりも速度」の踏み込み。△5四歩なら▲4二金以下の寄せがあります。実戦は△3三銀直と受けましたが、▲4一角から着実に寄せて先手が押し切りました。福間女流五冠が挑戦権を獲得し、ここでも西山女王との激突です。


写真:常盤秀樹

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