6月8日(土)に放映された予選Aリーグ第2試合のチーム渡辺「ジグザグ打線」(渡辺明九段、山崎隆之八段、岡部怜央四段)と、チーム中村「長考派」(中村太地八段、佐々木大地七段、渡辺和史七段)の戦いを振り返る。第1試合を5勝2敗と快勝したチーム渡辺は、勝てば予選通過を決められる。中村はリーダーとして迎える最初の試合だ。ドラフト会議で渡辺と中村の指名(佐々木七段)が被って抽選になった結果、中村が獲得した因縁のある対戦となった。
【第3局 渡辺明九段―佐々木大地七段】
開幕から2連敗とチーム中村が苦しい出だしに。この第3局も渡辺が必勝態勢を築き上げ、チーム渡辺が一気に勝利に近付いたかに見えたが......。
【第1図は▲3五金まで】
先手の必勝形から怪しくなって迎えた図。ここで△8七飛成が必殺の一手で、▲同玉に△6九角成▲7八金△8六歩▲同玉△8五歩▲7七玉△6八角として先手玉は詰んでいる。渡辺は「これを負けるプロがいるのかね」「1000回は勝ちを逃した」とぼやいていた。これで流れが変わったか、続く第4局も中村が難しい将棋を制して追い付く。
【第8局 山崎隆之八段―中村太地八段】
一時は0勝2敗、さらに2勝4敗と追い詰められたチーム中村だったが、そこからしぶとく粘り勝負に持ち込んでいく。端を押し込んで形勢は先手ペースとなっている
【第2図は△1二歩まで】
ここで▲1五角ののぞきが意外に受けにくい。次に▲4二角成から▲5三金がある。対しては△5二金なら後手も粘れたようだが、実戦は△6二角と投入したため、控室でも悲鳴が上がった。▲6五歩と突くのが好手で後手がしびれている。△同桂は▲6六歩なので△6五同歩としたが、▲6四歩△同銀▲4二角成△同玉▲7二金で綺麗に技が掛かり先手の大優勢だ。以下も確実に押し切って、4勝4敗で今大会初のフルセットへ。
【第9局 渡辺明九段―渡辺和史七段】
4勝4敗となり、決着はこの日2度目の渡辺対決にゆだねられた。第5局は先手の明九段が制したが、最終局は振り駒の結果、和史七段の先手となった。相掛かりから後手の動きにうまく対応して先手がペースをつかむ。
【第3図は△7四銀まで】
飛車が捕まったが先手の駒得も大きく、慌てる必要はない。▲2八角と銀を取りにいくのが冷静。△7五銀▲5五角△7六銀と必死に先手玉に迫るが、▲3四飛が冷静な両取りで勝負あり。△3三金に▲8四飛と外して先手玉は寄らなくなり、以下は先手が押し切った。
ここまで2連敗と苦しんでいた渡辺和だが、大勝負で勝利打点をあげてチーム中村の勝利を決める。敗れたチーム渡辺だが、1勝1敗ながら岡部の活躍もあり、得失点差の関係で予選通過は決まった。チーム中村は予選第3試合に有利な状況で臨むこととなった。
【総合成績】
第1局 中村●─○岡部
第2局 渡辺和●─○岡部
第3局 佐々木○─●渡辺明
第4局 中村○─●山崎
第5局 渡辺和●─○渡辺明
第6局 佐々木●─○岡部
第7局 佐々木○─●山崎
第8局 中村○─●山崎
第9局 渡辺和○─●渡辺明
総合5勝 ― 4勝
【個人成績】
中村八段 2─1
佐々木七段 2─1
渡辺和七段 1─2
渡辺明九段 1─2
山崎八段 0─3
岡部四段 3─0