藤井、タイトル戦の連勝記録を更新

 藤井聡太王将に菅井竜也八段が挑戦した第73期ALSOK杯王将戦七番勝負。ここまでタイトル戦で19連勝中の藤井には大山康晴十五世名人の持つタイトル戦番勝負における連勝記録の更新が掛かるシリーズとなった。

第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局

 両者がタイトル戦で顔を合わせるのは前期の叡王戦五番勝負以来2度目となる。第1局は栃木県大田原市ホテル「花月」にて。菅井の三間飛車から相穴熊になり、なかなか駒のぶつからないじっくりとした戦いになる。ようやく本格的な戦いが始まった時に藤井の残り時間はかなり少なくなっていた。

【第1図は▲4四歩まで】

 形勢はやや後手良しながら、残り時間が数分なのが気掛かりだ。しかし藤井は慌てない。△5八歩成▲4三歩成△同金▲5二角△4八と▲同金寄△7四金▲4三角成に△6四角が好打。自陣に利かせながら△5九飛を厳しくした好防手で抜け出した。以下は先手の穴熊に噛みついて、後手の穴熊は手付かずのまま投了に追い込んだ。


写真:八雲

第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第2局

 第2局は佐賀県上峰町「大幸園」にて。本局の菅井は三間飛車から美濃囲いに組むが、錯覚があったようで藤井が初日からリードを奪う。

【第2図は△6一歩まで】

 先手は四枚穴熊の堅陣が頼もしく、後は後手陣を崩すだけだ。▲5三歩△同銀▲6五香と金をはがしにいくのが確実。以下△3一歩に▲6二香成△同銀▲5二とで先手勝勢となった。


写真:翔

第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

 第3局は菅井の角交換振り飛車からじっくりした戦いに。藤井はバランスを保った指し回しで、少しずつペースをつかんでいった。

【第3図は▲6六同歩まで】

 ここで△5六歩がうまい揺さぶり。先手は▲5三歩成△同金▲5八歩と辛抱したが、拠点が消えるのではつらく、△6七飛▲9六角△6六飛成とじわじわと優位を拡大。本局もまた寄せ合いにならず、藤井が大差で押し切った。


写真:武蔵

第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

 第4局は東京都立川市「オーベルジュ ときと」にて。角交換振り飛車の乱戦模様から、一転持久戦に。しかし、藤井が序盤のスキを見逃さず、模様を良くすることに成功した。

【第4図は△2二馬まで】

 自陣の竜と馬が手厚く、局面ははっきり先手の模様が良いが、具体的にどう良くするか。▲3四歩△6四歩▲4九竜△4四歩▲2九竜が2~3筋から押しつぶしにいく好着想。竜を使った贅沢な棒銀で、後手は先手の攻めを止められない。以下も気持ちよく攻め続けて藤井の快勝となった。

 藤井は圧巻の内容で4連勝。つけ入るスキを与えない指し回しで、通算20期目のタイトル。タイトル戦の連勝も新記録となった。果たしてこの記録はどこまで伸びるのだろうか。


写真:常盤秀樹

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