八冠への挑戦始まる 8月下旬の注目対局を格言で振り返る

 永瀬拓矢王座と藤井聡太竜王・名人の王座戦五番勝負が始まりました。王位戦の防衛も果たし、史上初の八冠制覇をかけたシリーズです。

第71期王座戦五番勝負第1局

【第1図は▲9二桂成まで】

 第1図は第71期王座戦五番勝負第1局(▲藤井聡太竜王・名人△永瀬拓矢王座)。角換わりから難解な攻防が続いています。次に▲4二飛から簡単に詰んでしまうので後手は何か受ける必要がありますが、△1四銀▲4一飛△1三玉が「中段玉寄せにくし」の粘り強いしのぎでした。先手は角や銀を持っていないため、1三の玉が妙に寄りません。以下も先手の猛攻を耐えて、永瀬王座が後手番で大きな白星をあげました。


写真:八雲

伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負第4局

【第2図は△5五桂まで】

 第2図は伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負第4局(▲佐々木大地七段△藤井聡太王位)。相掛かりから巧みな順で飛車を捕獲し、先手が優勢の終盤戦です。▲4一銀が「要の金を狙え」の厳しい寄せで、これで後手は受けがありません。以下は△6七と▲4九玉△5七桂成▲5三角まで後手投了。佐々木七段が二日制で初白星をあげました。


写真:中野伴水

伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負第5局

【第3図は△2七飛成まで】

 第3図は伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負第5局(▲藤井王位△佐々木七段)。横歩取りからの攻め合いで竜を作り、一見後手の攻めの方が厳しそうな局面です。しかし、▲2四歩が「玉は包むように寄せよ」の好手。△2四同竜は先手玉への響きがなくなってしまいますので△3六銀と攻めましたが、先手はしばらく受けに回り、最後は2四歩の威力を生かして寄せ切りました。これで4勝1敗とした藤井王位は4連覇です。


写真:武蔵

大成建設杯第5期清麗戦五番勝負第4局

【第4図は▲3四銀まで】

 第4図は大成建設杯第5期清麗戦五番勝負第4局(▲西山朋佳女流三冠△里見香奈清麗)。後手は金駒が守りに偏っていますが、ここでうまい攻め筋がありました。△2八歩▲同玉△6六歩▲同銀△2六歩が「飛車は十字に使え」の好手順。▲同歩△同飛▲2七歩は△6六飛と銀を取ることができます。実戦は▲3六角としましたが△2七歩成▲同角に△2六飛が飛車を働かせる手で、後手がペースをつかんでいます。本局を勝った里見清麗は3勝1敗で防衛を果たしました。


写真:翔

第73期ALSOK杯杯王将戦二次予選

【第5図は△8九竜まで】

 第5図は第73期ALSOK杯杯王将戦二次予選(▲菅井竜也八段△広瀬章人八段)。後手が必死の食い付きをしている終盤戦ですが、▲5九馬△2九金▲同角成で先手陣は鉄壁になりました。「馬は自陣に引け」「馬の守りは金銀3枚」と言いますが、2枚馬の囲いは珍しいでしょう。以下は後手の攻めを余して先手が制勝。実績十分の菅井八段ですが、王将リーグ入りは初となりました。


写真:紋蛇

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