タイトル戦が続々 4月下旬の注目対局を格言で振り返る

 名人戦は藤井聡太竜王が2連勝で史上最年少名人に前進。また、棋聖戦では佐々木大地七段がタイトル初挑戦を決めています。

第81期名人戦七番勝負第2局

【第1図は△3三玉まで】

 第1図は第81期名人戦七番勝負第2局(▲藤井聡太竜王△渡辺明名人)。相居飛車の力戦から二日目の夜に入っても激戦が続いていましたが、ついに先手に形勢が傾いたところです。飛車角両取りが残っていますが、▲2六歩が「両取り逃げるべからず」の踏み込み。上部の厚みを消せば、後手玉への寄せが自然と見えてきます。以下△8九竜▲7九金△7七桂打▲5九玉△7九竜と迫るも先手玉には届かず、藤井竜王が制しました。


写真:田名後健吾

第8期叡王戦五番勝負第2局

【第2図は△4五同歩まで】

 第2図は第8期叡王戦五番勝負第2局(▲菅井竜也八段△藤井聡太叡王)。相穴熊のねじり合いとなりましたが、中盤にうまいさばきを見せた菅井八段が優位に立ちます。▲4八香が「下段の香に力あり」で、4九に飛車が控えているため、4筋の制空権を奪うことができました。5一の香も存在感がありますが、より玉に近い位置を制圧したのは先手にとって大きなポイントです。最後は一気に踏み込み、菅井八段が快勝で1勝1敗と追いつきました。


写真:飛龍

第16期マイナビ女子オープン五番勝負第2局

【第3図は△6七歩まで】

 第3図は第16期マイナビ女子オープン五番勝負第2局(▲西山朋佳女王△甲斐智美女流五段)。先手がさばいて優勢となり、何とか後手も勝負に持ち込もうとしています。▲1五歩が「三歩持ったら端に手あり」の攻めでした。後手陣の防壁は強力ですが、端から攻めればむしろマイナスです。以下△同歩▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲2五桂△2四銀▲1三桂成△同銀▲1八香打と徹底的に端を攻め立てて、押し切ってしまいました。


写真:睡蓮

第34期女流王位戦五番勝負第1局

【第4図は△4五馬まで】

 第4図は第34期女流王位戦五番勝負第1局(▲伊藤沙恵女流四段△里見香奈女流王位)。激戦の終盤ですが、先手は穴熊なのが心強いです。▲6一竜△6二歩▲6四桂が「要の金を狙え」の寄せの好手でした。▲6一竜は近付く寄せで後手が金を持っていると先手で固められてしまいますが、この場合は6四にも利かす受けにくい手です。以下後手も粘りましたが最後まで先手の穴熊は遠く、挑戦者が開幕戦を制しました。


写真:翔

第94期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦

【第5図は△3三角まで】

 第5図は第94期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦(▲佐々木大地七段△永瀬拓矢王座)。相掛かりから駒組みで先手がリードを奪い、着実に差を広げています。▲3七桂が「遊び駒は活用せよ」の確実な手。桂まで働いて先手陣は全軍躍動です。永瀬王座も最後まで粘りましたが差は埋まらず、先手が押し切っています。


写真:睡蓮

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