西山、初の女流名人に

 伊藤沙恵女流名人に西山朋佳女王・女流王将が挑戦した第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負。西山は初参加で番勝負まで勝ち上がってきた。第36期からずっと里見香奈女流五冠が番勝負に出続けていたが、連続出場記録がストップ。

第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局

 第1局は神奈川県箱根町「岡田美術館」にて。西山の三間飛車に伊藤は急戦を目指す。

【第1図は▲3一角成まで】

 先手は金を繰り出して押さえ込みを図ったが、後手がさばきのチャンスを迎えている。△4六飛と飛車を切り、▲同金に△6六歩▲5六銀△6七歩成▲同銀と6筋の歩を消してから△9九角成で後手の攻めが止まらない。こうなると美濃囲いの堅陣が生きる展開で、まずは挑戦者の快勝となった。


写真:紋蛇

第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第2局

 第2局は島根県出雲市「出雲文化伝承館」にて。西山の三間飛車に伊藤は銀冠穴熊に組み上げる。先手がペースをつかんだが、後手の反撃にもあって二転三転の大熱戦となった。

【第2図は△5二竜まで】

 ▲2四桂打が狙いの攻め。△4四銀と竜を開いたが、▲1二桂成△同玉▲5六香と埋めて後手の攻めを受け止めている。こうなると先手玉の左辺が広く、捕まらない格好となった。激戦を制し、西山が2連勝。


写真:翔

第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第3局

 第3局は千葉県野田市「関根名人記念館」にて。第1局同様に西山の三間飛車に伊藤の急戦の出だしだったが、伊藤は持久戦に切り替える。西山の動きに対応し、ペースをつかんだ。

【第3図は△5四同銀まで】

 ここで▲4三金がうまい手作り。△6三飛と逃げれば▲5三歩や▲5二歩で攻めが続く。△4三同銀は仕方ないが、▲4五桂が気持ちの良い跳躍。△6三飛▲4三歩成△同飛▲5四銀△2三飛▲5五角で盤面を制圧し、先手良しがはっきりしてきた。以下は伊藤が快勝でカド番をしのぐ。


写真:睡蓮

第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局

 第4局は東京・将棋会館にて。第2局同様に西山の三間飛車に伊藤は銀冠穴熊を目指すが、西山が動いてペースをつかむ。しかし、伊藤にもチャンスが訪れ、形勢は二転三転。伊藤が得意とする入玉模様へともつれ込んだ。

【第4図は▲6四飛成まで】

 実戦は△5四金と厚く埋めて▲6三竜に△4五玉と入玉を目指したが、▲3三歩が見た目以上に厳しく、後手の入玉よりも金銀を削る攻めの方が速く形勢は逆転した。図では△5四桂と埋める方が良かったようだ。金を残していれば攻防に手段が多い。最後は九段目までもぐり込んだ伊藤玉だが、即詰みに打ち取られて投了。西山が3勝1敗で女流名人を初戴冠。これで女流棋界の八冠は西山が三冠、里見が五冠となり、この二人が独占することとなった。


写真:八雲

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