藤井VS羽生決着 3月上旬の注目対局を格言で振り返る

 白熱した藤井聡太王将と羽生善治九段の王将戦七番勝負は藤井王将が4勝2敗で防衛を果たしました。そして名人挑戦権も得て、史上最年少名人の記録にも挑みます。

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第6局

【第1図は△3三桂まで】

 第1図は第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第6局(▲羽生善治九段△藤井聡太王将)。△3三桂と跳ねた封じ手の局面です。▲3四銀が「桂先の銀定跡なり」で後手からの攻めを押さえます。以下△5二玉▲7七桂△8四飛▲2八玉と進みましたが、△3六銀が3四銀に対抗する好位置で、先手に圧力を掛けて後手ペースの戦いです。最後は切れ味を見せて後手が快勝となり、スター対決は藤井王将が制しました。


写真:金子光徳

第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

【第2図は△2四同玉まで】

 第2図は第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局(▲藤井聡太竜王△渡辺明棋王)。後手が優勢~勝勢の時間が長い将棋でしたが、先手も粘りに粘ってついに逆転した局面です。ここは▲2五歩と打てば「一歩千金」で後手玉は即詰みでした。しかし実戦は一分将棋の中▲2六飛としたため、△2五香以下最後は打ち歩詰めの形になり後手玉は詰みませんでした。渡辺棋王が藤井戦の連敗を止める大きな1勝です。


写真:将棋世界

第81期A級順位戦プレーオフ

【第3図は△9六歩まで】

 第3図は第81期A級順位戦プレーオフ(▲藤井聡太竜王△広瀬章人八段)。7勝2敗の二人によるプレーオフになりました。角換わり腰掛け銀の攻め合いから迎えた終盤戦。次に△7六歩が厳しい狙いになっていますが、▲3七桂が「桂は控えて打て」の好手でした。△7六歩に対し▲同金と取る狙いで、△同馬なら馬の利きがそれるため▲2五桂打から後手玉が詰みます。詰みを見据えた好防手で抜け出した藤井竜王が名人の挑戦権もつかみました。


写真:名人戦棋譜速報

第16期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦

【第4図は▲7七同金直まで】

 第4図は第16期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦(▲加藤桃子女流三段△甲斐智美女流五段)。穴熊の猛攻を余して後手に流れが来た局面です。△4四角が好位置で「角筋は受けにくし」となっています。次に△7七角成が厳しいので▲7八金打と埋めましたが、△9七歩▲同香△9六歩▲同香△9七桂と攻めて二枚竜と角ににらまれた先手玉は受けが難しくなりました。驚きの引退発表のあった甲斐女流五段ですが、その実力は健在で久しぶりのタイトル戦登場です。


写真:八雲

第81期順位戦C級2組

【第5図は△5五香まで】

 第5図は第81期順位戦C級2組(▲古賀悠聖四段△今泉健司五段)。今期順位戦最後の昇級者が決まった一局です。激戦の終盤ですが、▲7五金が「敵の打ちたいところへ打て」の制空権を握る一手。逆に△7五桂を打たれてしまうと先手の穴熊に手が届いてしまいます。以下は△6九角に▲7八銀打と埋め、最後まで穴熊の遠さを生かして押し切りました。古賀四段はフリークラスでデビューした棋士としては初の順位戦昇級です。


写真:名人戦棋譜速報

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