藤井、3連覇達成

 3連覇を目指す藤井聡太棋聖に永瀬拓矢王座が挑戦した第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負。永瀬王座は前期、前々期と挑戦者決定戦で敗れていたが、今期は大一番を制し、両者は初めてタイトル戦で顔を合わせることになった。

第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

 第1局は兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」にて。藤井が先手で相掛かりとなるが、中盤で千日手となる。ところが指し直しで先手になった永瀬も角換わり腰掛け銀からあっさり千日手を選ぶ。いきなり2局続けての千日手と波乱のスタート。再び先手となった藤井は角換わりを選択。永瀬の研究が上回り形勢をリードした。

【第1図は▲8三飛成まで】

 ここで△6五角が派手な決め手。▲同銀なら△5八角から△4七角成で受けが難しい。実戦は▲6二ととしたが△8三角と竜を外されて勝負あり。永瀬が開幕戦を制した。

第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

 第2局は新潟県岩室温泉「高志の宿 高島屋」にて。角換わり腰掛け銀から永瀬が時間を大量にリードする展開となった。形勢の揺れ動く大熱戦となるが、最後に藤井が鮮やかな寄せを見せる。

【第2図は▲3一金まで】

 図で△9七銀が寄せの妙手となった。この手は△6七桂不成からの詰めろ。実戦は▲2一飛△1二桂と使わせてから▲9七桂と手を戻したが、△4八歩が正確な寄せで筋に入った。△7八金以下の詰めろを受けて▲6八歩としたが、△6七歩成から寄せ切った。時間切迫の中、切れ味を見せた藤井が1勝1敗と追いつく。

第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局

 第3局は千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」にて。角換わり腰掛け銀から難解な応酬となったが、徐々に藤井が抜け出していく。後手の猛攻を受け止めてリードを拡大した。

【第3図は△8三銀まで】

 後手も必死に先手玉を捕まえようとするが、わずかに駒が足りない。▲8四金△9三桂▲同金△同香に▲8二とが冷静な手で先手玉は捕まらない。余裕を得たところで▲2五桂と反撃に回り、藤井が熱戦を制した。

第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局

 第4局は愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」にて。相掛かりから後手の藤井が2歩損を受け入れる珍しい展開に。難解な形勢だったが、居玉のまま強く踏み込んだ藤井がリードする。

【第4図は▲3九玉まで】

 後手が攻防に際どくバランスを保つ指し回しを見せる。▲6五金からの詰めろをどう受けるかだが、△3六銀▲3七桂△4五歩が正確なしのぎで、玉の逃げ道を作りながら攻め駒も前に出している。以下▲8一飛成に△2六香▲2八歩△5五角と自玉を安全にしながらの寄せを決めた。

【第1図は▲4六飛まで】

 藤井は10代最後の対局を制して3勝1敗で棋聖防衛。棋聖は3連覇、タイトル通算は9期目で、歴代単独9位に浮上した。

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