渡辺明棋王に永瀬拓矢王座が挑戦した第47期棋王戦五番勝負。棋王戦では第43期以来の対戦で、その時はフルセットの末に渡辺が防衛を果たしている。渡辺は今回の防衛戦に節目の10連覇が懸かっている。永瀬はこれまで苦杯をなめさせ続けられた渡辺の壁を破れるか。
第47期棋王戦五番勝負第1局
第１局は静岡県焼津市「焼津グランドホテル」にて。角換わり模様の出だしから、後手の渡辺が角道を止めて雁木を目指した。互いの棋風通り、渡辺が攻め、永瀬が入玉含みに受ける展開に。
【第１図は▲６七金寄まで】
△７三歩で逃げ道をふさぎ、▲３三歩△同桂▲７四歩に△５六桂が味の良い桂跳ね。△６四歩を見ながら金取りにもなっている。以下▲７三歩成で先手は入玉を目指したが、最後は捕まった。渡辺が10連覇に向けて好発進。
写真：日本将棋連盟
第47期棋王戦五番勝負第2局
第２局は石川県金沢市「北國新聞会館」にて。相掛かりから互いにじっくりと陣形をまとめる持久戦になった。
【第２図は△８二飛まで】
競り合いが続いていたが、この数手で中央を押し込んだ先手に形勢が傾いている。▲５五銀が決めに行った手で、△５三銀引▲４五桂△６七歩成に▲６三歩成△同銀▲５三桂成と踏み込んで先手の勝ち筋に入った。渡辺が２連勝。
写真：日本将棋連盟
第47期棋王戦五番勝負第3局
第３局は新潟県新潟市「新潟グランドホテル」にて。角換わり腰掛け銀から先手が９筋の位を取り、後手が先攻する展開となった。
【第３図は△３八銀まで】
２九飛・４八金型に対する狙い筋の△３八銀が実現したところだが、先手の攻め駒は豊富だ。両取りに構わず▲４四銀△２九銀不成▲４三角と寄せを目指したのが好判断で、先手の一手勝ちに。以下△２三銀▲３二角成△同銀▲４三銀打△４二歩▲３三銀成から寄せ切った。永瀬が１勝を返す。
写真：日本将棋連盟
第47期棋王戦五番勝負第4局
第４局は栃木県日光市「日光東照宮」にて。先手の渡辺が矢倉を目指したのに対し、永瀬は中住まいに構える。中住まいの急所をついた攻めを実現し、渡辺ペースで戦いが進む。
【第４図は△８六歩まで】
この△８六歩は部分的に厳しい手で、▲同銀なら△７六桂から詰む。だが、この局面では先手に決め手があった。 図では▲５二銀が必殺手。△同玉には▲４三角△６三玉▲６四歩から詰み。実戦は△５二同金と取ったが、▲８四角△６一玉▲５七角と竜を抜いて勝負あり。
写真：日本将棋連盟
渡辺は３勝１敗で防衛。今年度最後のタイトル戦で棋王10連覇、タイトル通算30期目と節目のシリーズとなった。永瀬はまたも渡辺の壁を突き崩せず、複数冠への復帰はお預けとなった。
写真：日本将棋連盟