ヒューリック杯棋聖戦はリターンマッチに。4月下旬の注目対局を格言で振り返る

 名人戦、マイナビ女子オープンともタイトルホルダーが追いつき、白熱したシリーズになっています。そして藤井聡太棋聖の初防衛戦はリターンマッチとなりました。

第79期名人戦七番勝負第2局

【第1図は△5一玉まで】

 第1図は第79期名人戦七番勝負第2局(▲渡辺明名人△斎藤慎太郎八段)。後手玉を下段に落とし寄せまであと一歩です。▲7二銀不成△9二角▲6一銀不成が「銀は不成に好手あり」の寄せでした。▲6一銀成(または▲6一成銀)なら王手になりますが、後手はいずれにしても△4二玉と逃げるので、その際に不成の方が寄せに働いています。実戦もうまく手をつないだ先手が押し切っています。


写真:武蔵

第14期マイナビ女子オープン五番勝負第2局

【第2図は▲4七歩まで】

 第2図は第14期マイナビ女子オープン五番勝負第2局(▲伊藤沙恵女流三段△西山朋佳女王)。相振り飛車の終盤戦ですが、攻めが厳しく後手優勢です。△5九銀が「要の金を狙え」の寄せで、壁銀の反対からの攻めで金無双の弱点を突いています。▲3九銀と粘りましたが△4六飛▲同歩△4八銀成▲同銀△5六香と緩まずに攻めて押し切りました。


写真:銀杏

第32期女流王位戦五番勝負第1局

【第3図は▲8六歩まで】

 第3図は第32期女流王位戦五番勝負第1局(▲山根ことみ女流二段△里見香奈女流王位)。山根女流二段が大舞台に初登場です。相振り飛車から大熱戦の終盤戦ですが、ようやく後手が勝ちになりました。△7八銀が「玉は包むように寄せよ」で、飛車取りにもなっている決め手です。実戦は△7八銀まで先手の投了となりました。


写真:虹

第92期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦

【第4図は△7六桂まで】

 第4図は第92期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦(▲渡辺明名人△永瀬拓矢王座)。相掛かりから後手が押していた将棋でしたが、逆転して先手優勢になっています。桂の王手に対応する必要のある局面ですが▲7七玉と逃げ、△8六桂▲1二角成△8五桂に▲8六玉と「桂頭の玉寄せにくし」で先手玉は捕まりません。以下は反撃の猶予を得て先手の勝ちとなりました。昨年と立場を入れ替え、藤井棋聖に渡辺名人が挑戦する構図となりました。


写真:八雲

第34期竜王戦ランキング戦6組準決勝

【第5図は△4六歩まで】

 第5図は第34期竜王戦ランキング戦6組準決勝(▲長谷部浩平四段△小山怜央アマ)。アマチュア初の5組昇級を掛けた大一番ですが、うまく戦機をとらえた先手優勢の局面です。▲2三歩が「金は斜めに誘え」の手筋。拠点を残すわけにはいかないので△同金ですが、▲2五歩が厳しい追撃。△3二金と角のラインをかわしたものの、▲4三歩が再度の手筋で後手は支えきれません。長谷部四段が快勝でプロの意地を見せました。

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