「勝負を決めたあの一手」とは?永瀬新王座が第67期王座戦五番勝負を解説。

第67期王座戦五番勝負で斎藤慎太郎王座(※肩書きは当時)を破り、自身初の二冠に輝いた永瀬拓矢新王座。

日本経済新聞東京本社で行われた「新王座、熱闘を振り返る」では、第1局の戦いぶりを豊川孝弘七段、飯野愛女流初段ともに振り返っていただきました。

永瀬新王座は、今回の王座戦をどのような心境で挑んでいたのか、対局中は何を考えていたのか。ファンから寄せられた質問への回答も注目です。

開幕局で千日手。永瀬新王座らしさが出た一局。


王座戦中継ブログより

陣屋で行われた第1局は63手で千日手が成立。千日手といえば永瀬新王座、という印象のファンも多いだろう。実にらしい将棋となった。

ちなみに、王座戦で千日手が成立するのは2013年の羽生善治王座vs中村太地七段戦以来だ。(肩書きは当時)

永瀬新王座 「先手番だったので千日手だと後手番が増えてしまいますが、あまり気にしてはいなかった。一局一局で最善を出すことが大事なので。」

指し直し局の戦型は、千日手となった角換わりではなく矢倉。前夜祭で多くの棋士が予想していた戦型だ。

【図は40手△9九とまで】

永瀬新王座 「『△9九と』と2枚替えを選んだのが一番覚えているポイントですね。と金はできていますが、斎藤さんの手番だったのでこちらがいいとは思ってなかったです。」

豊川七段 「僕はパッと見で永瀬さん側を持ちたいけど、意見が分かれる局面かもしれないね。」

永瀬新王座 「こちらが一手遅れている感覚でした。形勢は難しいながらも主導権は斎藤さんが握っているかと。」

【図は43手▲7四銀まで】

永瀬新王座 「その後打たれた▲7四銀は全く予想していない手でした。僕は▲4五銀打がくると思っていたので。この辺りは斎藤王座も自信がなかったそうなので、お互いに自信なしで進んでいましたね。」

予想外の▲7四銀に対し、消去法で指した飛車寄り金上がりがいい手だったと永瀬新王座は続ける。

【図は46手△7二金まで】

永瀬新王座 「飛車を金で囲ってあげたのが良かったと思います。というのも近年は玉だけでなく飛車を囲うことが重要視されているので。この金のおかげで窮屈そうに見える飛車が随分と取られにくくなっています。」

その後は永瀬新王座のペースで進んでいくが、失着もあったという。

【図は62手△2二玉まで】

永瀬新王座 「△2二玉が悪手でしたね。というよりも悪手にさせられてしまった。」

飯野女流初段 「玉を囲う自然な一手に見えますが?」

永瀬新王座 「▲4五金を予想して玉を上がったのですが、次に打たれた▲2五金の受けがなくなってしまいました。4三にある歩が邪魔で駒を足すことができないんですよね。この金打ちは斎藤流だなーと思いました。」

飯野女流初段 「でもその後に永瀬新王座が指した手が勝負を決めたと聞いていますが!」

永瀬新王座 「△5五歩ですね。」

【図は64手△5五歩まで】

永瀬新王座 「悪手で形勢はだいぶ詰まっていましたが、この手である程度リカバリーできたかなと。タイミングよく香車を走らせれば勝てると思っていたので、この攻め合いが良かったですね。」

その後、永瀬新王座がうまく指して初戦を白星で飾った。「1勝したがホッとしたということはなかった。3勝しないと意味がないので次も頑張ろうと思っていました。」と軍曹らしい引き締まった感想を聞かせてくれた。

実はバナナよりも〇〇の方が好き?永瀬新王座の知られざる素顔

解説の後は質問コーナーに。Twitterでは「#永瀬新王座に聞きたい」でたくさんの質問が集まった。ここでは質問の一部をご紹介したいと思う。

質問「バナナよりいちごの方が好きと言う噂がありますが、こちらは本当ですか?」

永瀬新王座 「そうですね、バナナは栄養補給と思って食べているので、好きに違いないですが、いちごの方が好きですね。でも一番好きなのはメロンです。メロンは自分で買えないので、もらえるとすごく嬉しいです。(笑)」

質問「毎日対局か研究会をしていると聞いたのですが、本当ですか?」

永瀬新王座 「棋士になりたての頃は、ほぼ毎日していましたね。ただそれは自分に何が足りないかわかっていなかったので、数をこなして自分の欠点を知りたかったからです。
今は昔の半分ぐらいになりましたよ。ただ多くやればいいって訳でもないので、自分のパフォーマンスをあげるベストな回数を試行錯誤しています。」

まとめ

本記事では第1局の解説を載せていますが、第2局・第3局ももちろん解説しています。その模様は動画配信サイト「Paravi(パラビ)」で配信されているので、ぜひそちらをチェックしてみてくださいね。

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