ヒューリック杯棋聖戦五番勝負は渡辺二冠が2勝目。A級順位戦羽生善治九段VS佐藤天彦九段戦など、6月下旬の注目対局を振り返る

頂上決戦となったヒューリック杯棋聖戦五番勝負は一進一退の攻防になっています。また、竜王戦の決勝トーナメントA級順位戦が始まっています。

第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

【第1図は▲5五角まで】

第1図は第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局(▲豊島将之棋聖△渡辺明二冠)。角換わり腰掛け銀から後手ペースで進んだ終盤戦。図の▲5五角は攻防手ですが、ここで△6七歩成が軽手。▲6七同玉は△3九銀から攻められた時に当たりが強いので▲同金としましたが、「金は斜めに誘え」を実現することができました。以下△6六歩▲同角△6五銀と、手厚く押しつぶしにいって後手が押し切りました。


五番勝負第2局 ヒューリック杯棋聖戦中継ブログより


勝った渡辺二冠 ヒューリック杯棋聖戦中継ブログより

【第2図は△5六歩まで】

第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局

続いて第2図はヒューリック杯棋聖戦五番勝負の第3局(▲渡辺明二冠△豊島将之棋聖)。渡辺二冠がうまく立ち回って優位に立っています。ここで▲2二歩が覚えておきたい手筋。△2二同金で守備を弱体化させることができました。以下は▲5四桂△同銀に▲6三銀と平凡に攻めて、先手十分です。渡辺二冠が快勝で、棋聖奪取まであと1勝としました。


五番勝負第3局 ヒューリック杯棋聖戦中継ブログより


2敗となった豊島棋聖 ヒューリック杯棋聖戦中継ブログより

第1期ヒューリック杯清麗戦本戦

【第3図は▲5六銀まで】

第3図は第1期ヒューリック杯清麗戦本戦(▲頼本奈菜女流初段△里見香奈女流五冠)。振り飛車党の里見女流五冠ですが、本局は居飛車で振り飛車を迎え撃つ立場になりました。6~9筋を制圧して形勢は後手優勢です。ここから△7三桂▲7七桂△6四銀が「位を取ったら位の確保」の手堅い指し手で、先手は指す手がありません。以下は暴れましたが的確に対応して後手完勝。里見女流五冠は自身初の六冠を目指して、甲斐智美女流五段との五番勝負に臨みます。


ヒューリック杯清麗戦中継ブログより

第78期A級順位戦1回戦

【第4図は△2二玉まで】

第4図は第78期A級順位戦1回戦(▲羽生善治九段△佐藤天彦九段)。昨年に名人戦七番勝負を戦った両者の対戦です。▲7三飛成と金を取る手も自然ですが、竜の働きが悪くなるのが気になります。ここで▲3六桂が「終盤は駒の損得よりも速度」、「桂は控えて打て」の好手。2四、4四の両方に跳ねることができるので、この桂で3二の金を狙うことができます。以下も難しい戦いが続きましたが、後手の追撃をかわしきった羽生九段が制勝しています。


名人戦棋譜速報より

第67期王座戦本戦

【第5図は▲3四歩まで】

棋聖戦を戦っている両者は、王座戦でも激突しました。第5図は第67期王座戦本戦(▲渡辺明二冠△豊島将之名人)。ここで△4八金が「玉は包むように寄せよ」の寄せ。飛車取りにもなっており、こうしたことがあるため「玉飛接近すべからず」の格言もあるのです。飛車を逃げれば△8六飛~△7七銀で寄せきれるので▲2三歩から攻め合いましたが、最後に△3九金と取った手が詰めろ逃れの詰めろになって後手制勝。豊島名人は準決勝で羽生九段と対戦します。

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