里見香奈女流四冠がクイーン王位の称号を得て女流五冠復帰 渡部愛女流王位との女流王位戦を振り返る

渡部愛女流王位の初防衛か、里見香奈女流四冠のクイーン王位かのシリーズとなった第30期女流王位戦。前期とは立場を入れ替えて渡部がタイトルホルダー、里見が挑戦者だ。

前期は3勝1敗で渡部が勝ち、初のタイトル獲得。失冠した里見だが、今期のリーグは5戦全勝。清水市代女流六段との挑戦者決定戦も快勝で、危なげなく五番勝負への舞台に戻ってきた。女流名人、女流王将、倉敷藤花に続く永世称号を狙う。

第30期女流王位戦五番勝負第1局

開幕は4月25日に兵庫県姫路市「夢乃井」にて。里見の先手中飛車に渡部は持久戦志向。難解な中終盤のねじり合いとなる。

【第1図は▲5六桂まで】

第1図では△3七角成と踏み込むべきだった。▲3七同金なら△4八角成▲同金△5九竜と迫れるし、▲3七同玉には△5五金とかわす手が攻防になって味が良い。本譜は△4二角▲同と△同角と受けに回ったが、▲4四桂△同金▲6二角で攻めが続いて大差になった。里見が先勝し、復位に好スタート。


初戦を白星で飾った里見香奈女流四冠

第30期女流王位戦五番勝負第2局

第2局は5月8日に北海道帯広市「とかちプラザ」にて。帯広は渡部の出身地で、タイトルホルダーとして地元に帰ってきた。里見が四間飛車から中飛車に振り直す趣向を見せ、渡部は急戦で対抗した。

【第2図は△8八馬まで】

第2図は先手優勢の終盤戦。ここで▲2二歩が手堅い勝ち方となった。桂や香を拾えば後手玉への寄せに役立つし、仮に取る手が回らなかったとしても後手の飛車の横利きを止める価値の高い手になっている。以下も押し切って渡部がホームで1勝を返す


五番勝負第2局


地元で勝利を収めた渡部愛女流王位

第30期女流王位戦五番勝負第3局

1勝1敗で迎えた第3局は5月29日に福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」にて。里見の角道を止めた三間飛車に、渡部は流行の急戦。難解なねじり合いとなり、シリーズ随一の大熱戦となった。

【第3図は△3八竜まで】

激戦の後がうかがえる終盤戦の第3図。まずは▲4五桂打とスペースを埋めて、△6二玉に▲1六角が攻防手になった。8三には先手の馬が利いているので、後手玉は見た目以上に狭い。△2八竜とかわしたものの▲5五歩と確実な攻めを間に合わせて勝負あり。里見が激戦を制し、奪取まであと1勝とした。


五番勝負第3局

第30期女流王位戦五番勝負第4局

第4局は6月13日に徳島市「JRホテルクレメント徳島」にて。里見のゴキゲン中飛車に渡部は超速3七銀から早い戦いとなった。

【第4図は▲4五銀まで】

第4図で手がなければ先手も持ち直せるが、△5七歩成が軽手。何で取っても△5六銀直からなだれ込んで、後手の飛車と角が目一杯働いてくる。形勢ははっきりと後手が優勢となり、以下先手も粘ったが大差のまま押し切られた。第3局までは好勝負が続いていただけに、渡部にとって悔やまれる一局となった。

里見が3勝1敗でシリーズを制し、昨年のリベンジを果たした。また、女流王位は5期目で、クイーン王位の資格も獲得。2016年以来の女流五冠にも復帰となった。次の第1期ヒューリック清麗戦では、自身初の六冠を目指すこととなる。


渡部愛女流王位の初防衛とはならなかった


女流王位に返り咲いた里見香奈女流四冠

※画像は女流王位戦中継ブログより

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