藤井聡太七段が朝日杯連覇達成、渡辺明は王将奪取で二冠に復帰【注目対局プレイバック 2019年2月下旬】

2月下旬は王将戦で挑戦者がストレート奪取。また、叡王戦の挑戦者も決まりました。朝日杯では藤井七段が見事な将棋で連覇を飾ったので、実戦に現れた格言を学んでいきましょう。

第68期王将戦七番勝負第4局

【第1図は▲8八角まで】

第1図は第68期王将戦七番勝負第4局(▲久保利明王将△渡辺明棋王)。後手ペースですが、のんびりしていると▲3四歩が間に合ってしまいます。ここで△5六歩▲同歩△5七歩が「要の金を狙え」の厳しい攻め。▲5五歩△5八歩成の攻め合いは取った駒の価値が違いますし、▲5九金も△9五角で角のラインに入ってきます。実戦は仕方なく▲4七金ですが、やはり△9五角ののぞきが厳しい王手で、後手が差を広げました。

絶好調の渡辺棋王が4連勝で王将奪取。二冠復位を決めました。


第68期王将戦七番勝負第4局 王将戦中継ブログより


4連勝でタイトルを奪取した渡辺棋王 王将戦中継ブログより


失冠した久保王将 王将戦中継ブログより

第4期叡王戦挑戦者決定三番勝負第2局

【第2図は▲4五歩まで】

第2図は第4期叡王戦挑戦者決定三番勝負第2局(▲永瀬拓矢七段△菅井竜也七段)。図の▲4五歩に△同金▲同銀△同歩では▲2二角成で馬を作られてしまいます。当然ながらここで△3六歩が良いタイミングで「開戦は歩の突き捨てから」です。▲3六同歩と取らせてから△4五金とし、▲同銀△同歩▲2二角成なら△3六飛と気持ちよくさばけます。実戦は△4五金に▲3八飛と辛抱しましたが、△4六金と前進して後手ペースです。

第4期叡王戦挑戦者決定三番勝負第3局

【第3図は▲2五同飛まで】

第3図は叡王戦挑戦者決定戦第3局(▲菅井竜也七段△永瀬拓矢七段)です。相穴熊で、駒割りだけ見れば飛車と銀の交換で先手の駒得ですが......。実戦は△1六香▲1七香打△同香成▲同香△1三香打▲5三角△1六銀▲同香△同歩▲1八香△1四香打と進行して後手優勢です。

先手としては歩切れが痛く、1歩でもあれば手順の途中で▲1七歩や▲1八歩の受けが利くので後手も攻めるのは簡単ではありません。香を足す単純な攻めは先手の歩切れを見越しているからです。「歩のない将棋は負け将棋」で、先手は歩切れに苦しめられて押し切られました。永瀬七段は3度目のタイトル挑戦ですが、悲願の初タイトル獲得はなるでしょうか。

第45期岡田美術館杯女流名人戦第4局

【第4図は△9二飛まで】

第4図は第45期岡田美術館杯女流名人戦第4局(▲里見香奈女流名人△伊藤沙恵女流二段)。こちらも駒割りだけ見れば角香と銀の交換で後手の駒得ですが、大駒の働きが大差です。また、と金の存在も大きく「5三のと金に負けなし」です。実戦は▲8一龍△5五香▲2五桂△5八香成▲同金△8九馬▲3三桂成△同角▲4三金とシンプルに攻めて先手勝勢です。と金が参加している攻めは切れにくいので、先手も自然な攻めで問題ありません。里見女流名人の快勝で、10連覇を達成しました。


女流名人戦中継ブログより


10連覇を果たした里見女流名人 女流名人戦中継ブログより


初タイトルを逃した伊藤女流二段 女流名人戦中継ブログより

第12回朝日杯将棋オープン戦決勝

【第5図は▲5六銀まで】

第5図は第12回朝日杯将棋オープン戦決勝(▲渡辺明棋王△藤井聡太七段)です。先手が▲5六銀と打って辛抱した局面ですが、藤井七段が鮮やかな攻めを見せました。

ここで△3五金が妙手。▲3七飛には△4六金が両取り、▲3八飛も△4六金から銀を奪って△4九銀の割り打ちがあります。実戦は仕方なく▲3九飛ですが、やはり△4六金のすりこみが厳しい攻め。▲5七銀には△同金~△4八銀があるので▲4七銀打とこちらに受けましたが、△同金▲同金となった局面は「金は斜めに誘え」を実現することができました。6七の地点が薄くなったので、悠々と△6四銀と力を溜めて、先手は粘るのが難しくなりました。

藤井七段は絶好調の渡辺棋王に完勝し、連覇達成の快挙を成し遂げました。


連覇を決めた藤井七段 朝日杯将棋オープン戦決勝


師匠の杉本八段より優勝杯を受け取る藤井七段

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