藤井聡太七段ともう一度勝負したい。本田奎四段のプロ入り後の目標と抱負とは【新四段インタビュー 本田奎四段後編】

新しく棋士となった本田奎四段へのインタビューコラムの後編です。今回は昇段のかかった大一番の対局や三段リーグの藤井七段に勝利した時の話を伺いました。(取材日:2018年11月1日)

勝てば昇段。三段リーグ最終日を迎えた心境とは

──前回の敗戦から、最終日を迎える前はどんな心境でしたか?

最終日が来てほしいような、来てほしくないような気持ちでした。最終日が来なくては四段になれませんし、でも負けたらどうしようという心配もありました。

──最終日はどちらか1局を勝てば昇段という状況でしたね。

とにかく1局目で決めないと、負けた状態で午後を迎えるとまずいなと考えていました。ただ、相手の出口若武三段は強敵で厳しいなと。

──新人王戦決勝まで進出した出口三段ですね。どのような将棋になったのでしょうか。

横歩取りで、相手がこの形をやってくることは分かっていました。研究を外れて少し進んだ局面が第4図です。

【第1図は△3四銀まで】

実戦は▲5六角△3六歩▲3四角△3七歩成▲同銀△2七角▲3八銀△5四角成と進みましたが、先手苦戦です。第4図では▲2一角と打つ手がありました。以下は△3一金▲3五歩△2一金▲3四歩と進んで優勢です。これなら会心譜になっていたと思いますが、まったく気付いていませんでした。

【第2図は▲5八角まで】

苦しいまま終盤に突入しています。第5図では△6四飛成とじっくり指されたら先手の指す手が難しい局面でした。本譜は△7九銀▲9八玉△6八馬と決めにきましたが、▲8八歩と打って簡単には決まりません。出口三段はそこで△7八馬▲同銀△6八飛成で決まると読んでいたようですが、▲6七角で耐えています。これで先手も持ち直しました。

【第3図は▲7九金まで】

激戦の終盤戦です。ここでは単に△5二銀か、△4一金▲同飛成△5二銀で難しい勝負と思っていました。出口三段もそれはあまり自信がないと見たようですが。本譜は△8四香と攻めにきましたが敗着に。▲6三角成△同角▲6四歩が痛打でいっぺんに先手の勝ち筋になりました。以下△4一角に▲3四桂が厳しい寄せで、数手後に後手の投了となりました。

──苦しい将棋を逆転したのですね。

最後は突然勝ち筋に入ったので、震えることもありませんでした。ずっと優勢の将棋だったりしたら、昇段を意識して大変だったと思います

大きな舞台で活躍したい。プロでの抱負

──ご両親はプロを目指すことについてどのような反応でしたか。

自由にやらせてもらいました。例会の後も結果は聞かれず、後日将棋連盟ホームページで確認していたみたいですね。ただ、「高校にだけは行ってくれ」とは言われました(笑)

──デビュー戦も近いですが、気持ちの方はいかがですか。

これまでは月に1~2回対局がありましたが、現状(取材日時点)はまだ対局が決まっていません。日程や相手が決まれば気持ちも上がっていくと思います。これまでと違って持ち時間も長くなりますが、こればかりはやってみないと分からないですね。

──公式戦で指してみたい相手は誰でしょう。

藤井聡太七段ともう一度指してみたいですね。三段リーグで対戦した時は時間攻めで勝ったようなものでしたから。私はプロ棋士との力関係はまだ分かっていないのですが、出口三段ならリーグでも戦っていますから分かります。新人王戦の決勝では出口三段に完璧な内容で勝っていて、今はどれだけの強さなのかと興味があります。

──プロとしての目標はなんでしょうか。

プロになったからには1局でも多く勝っていきたいです。多くの人に将棋を見てもらうために、結果を出して大きな舞台で将棋を指したいです。

おわりに

弟弟子に抜かれた悔しい思いをバネに、三段リーグを駆け上がりプロ入りを決めた本田四段。「藤井さんと当たるためにも早く結果を出したいですね。」と語る笑顔の奥からは並々ならぬ闘争心を感じました

次回は同じく四段になった山本博志四段のインタビューをお届けします。

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