今回は大駒の格言を見ていきます。
【第1図】
【第2図は△4四同銀まで】
第2図は幕末の棋聖と呼ばれた天野宗歩の御城将棋(1856年)から。先手が宗歩、後手が後の十一世名人となる伊藤宗印です。「遠見の角」と言えばこの局面が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。 第2図から▲1八角が有名な一手。以下△4二金▲5七銀右△3二玉▲5六銀△6二金▲5八飛から中央で戦いに持ち込み、手にしました。本局は宗歩が1八の角をうまくさばいて寄せの要にしたので、最後まで並べていただければと思います。 馬は非常に強い駒です。角の時は頭が弱いため、自玉の近くにあると責められて負担になることがありますが、馬となると違います。守備力が高く、「馬の守りは金銀3枚」とも言います。実際に金銀3枚分の守備力があるかと言われると微妙なところですが、自玉の近くに引きつけるとかなり堅くなります。
【第3図】
【第4図は△6二歩まで】
第4図は受けの達人大山康晴十五世名人の実戦から。ここでは▲5二歩成と踏み込んでも先手が優勢ですが、▲2七角成が負けない一手。馬冠が手厚く、先手が不敗の態勢です。以下△3六歩▲同馬△4四銀左と紛れを求めてきましたが、▲5二歩成△同金▲5四歩と攻めて先手勝勢です。勝ちを急がない大山名人らしい指し回しでした。
【第5図は△5五桂まで】
第5図は若いころの羽生善治竜王の実戦から。先手の居玉は馬が守備の要。△5五桂とその馬を責められたところ。ここで馬を逃げずに▲2三角とつないだのが驚きの受け。敵の攻めの拠点を残さず、かつ自陣の馬も残そうという受けです。歩切れの後手は小技が利かないのが泣きどころ。以下は先手に攻めのターンが回ったところで素早く寄せきりました。
【第6図は△3四馬まで】
最後に珍形を。第6図は第71期順位戦C級1組の▲浦野真彦八段△大平武洋五段戦(段位は対局当時)です。先手の金4枚が並んだ穴熊もめったに見られない堅さですが、馬2枚を引きつけた後手陣もケタ違いの堅さです。いったいどちらが堅いのでしょうか。以下は100手以上激戦が続きましたが、最後は先手が制しました。 いかがだったでしょうか。馬を引きつける受けを覚えればかなり負けにくくなるでしょう。