里見女流四冠の「△2七歩」。第3局で見せた鋭い切り返しの一手が勝負を決めた?【リコー杯女流王座戦振り返り】


第6期女流王座戦五番勝負第2局の対局場「芝苑」の入り口。撮影:夏芽(中継ブログより)

五番勝負第2局は大阪の料亭「芝苑」で行われました。女流王座戦では、第3期から4年連続の開催になります。芝苑で毎年恒例となっているのが、西遊棋プレミアムイベントです。関西の若手棋士、女流棋士が自ら企画し、運営するイベントは今回も大好評でした。詳細はこちらのコラムをご覧ください。


第2局当日に行われた西遊棋プレミアムイベントの模様。撮影:夏芽(中継ブログより)

この芝苑、実は加藤女流王座にとって、とても相性のいい対局場で、過去3回負けなし。第3期では里見女流四冠にも勝利しています。


第2局対局開始の模様。撮影:夏芽(中継ブログより)

今回は、第1局に引き続き里見女流四冠は中飛車を採用。加藤女流王座は穴熊に構えましたが、中盤で飛車切りの強手から鋭く攻めた里見女流四冠が勝利し、2連勝としました。 第3局は、こちらも毎年恒例となった静岡の「浮月楼」での開催。徳川十五代将軍慶喜公が晩年に過ごした邸宅で、大きな池と緑豊かな敷地は静岡駅からわずか徒歩5分ほどの立地にあります。対局室から大盤解説会場までは、この庭の池に架けられた橋を通って移動します。


第3局前日の記念撮影。両対局者とイベント、大盤解説会で出演の女流棋士で。撮影:常盤秀樹

前夜祭の前には両対局者と立会人の屋敷伸之九段、日本経済新聞解説棋士の村山慈明七段、地元出身の中尾敏行五段、イベント出演の藤田綾女流二段、室谷由紀女流二段で池の中央に設けられた水上ステージで記念撮影。両対局者とも笑顔が見られました。


第3局対局開始の模様。わずか数分で指し手がかなり進んだ。撮影:常盤秀樹

加藤女流王座の先手で始まった本局は、対局開始からお互いもの凄いスピードで指し続けます。通常は、開始時に立会人、関係者、報道陣が見守り3、4手指したところで退出。となるところですが、両者の指し手が止まらない。意地と意地とがぶつかり合っているようでした。特に第1局、第2局とも里見の早指しにペースをつかまれた感のある加藤女流王座は事前に相当な研究をしてきたのを感じることができました。

図は加藤女流王座が6八の銀を▲7七に上がった局面ですが、ここで△2七歩が鋭い切り替えしでした。▲同飛には△3六飛と回り、次に△3八角があるため▲3七歩としますが、△2六歩▲2八飛に△3三飛とした手が銀取り。以下、▲2六飛には△3五金▲2四飛△1五角▲2八飛に△2七歩~△2六歩で、次に2三の銀が取れます。実戦は、図の局面で▲4八飛としましたが、△3六飛と回り難解な形勢になりました。

この後も難しい局面が続きましたが、最後は里見女流四冠が鋭く寄せて3連勝。3期ぶりに女流王座に復位しました。

今回、一番印象に残っているのが、里見女流四冠のメリハリをつけた時間の使い方です。序盤は一気に飛ばし、勝負どころで惜しげもなく時間を使い、局面をリードすると一気に寄せきります。研究と終盤に対する自信を感じました。

加藤女流王座からは、タイトルホルダーとして五番勝負を3局で終わらせてしまった責任感と悔しさが伝わってきました。来期も挑戦者になれば、五番勝負連続出場記録は継続しますので期待したいです。

おすすめの記事

棋士・棋戦

2024.01.16

里見、2年連続の挑戦を跳ね返す