王将戦では過去に2連覇の実績アリ!渡辺明竜王の戦いに注目すべき、意外な理由とは

今期の王将戦挑戦者を決める『第66期王将戦挑戦者決定リーグ戦』を戦う7人の棋士を紹介するコラム、第5回は渡辺明竜王です。王将のタイトルは過去に2期獲得した実績のある渡辺竜王、今期は王将復位を目指してリーグを戦っています。

渡辺竜王の王将戦の実績

渡辺竜王が初めて王将戦の一次予選に参加したのは2001年の第51期で、初戦は突破したものの2回戦で敗退。それから王将リーグ入りまで、実に8回連続で予選敗退という結果でした。渡辺竜王ほどの実力者でも、王将リーグに入れたのはプロ入りから10年目、2009年の第59期のことでした。しかし、その時の王将リーグでは2勝4敗で陥落。将棋界最難関と言われる地獄のリーグの洗礼を浴びてしまいます。その悔しさを晴らすべく、翌年は二次予選を勝ち上がって再び王将リーグ入り、3勝3敗の結果でしたが、残留者決定戦に勝利して残留。その翌年は4勝2敗で残留と着実に結果を残していきます。

渡辺竜王が大活躍を見せたのは第62期王将リーグ。なんと6戦全勝で挑戦者に決定! そして佐藤康光王将(当時)との七番勝負を4勝1敗の成績で勝利し、第62期の王将となったのです。翌年の第63期王将戦は王将のタイトルホルダーとして挑戦者を迎え撃つ立場。このときの挑戦者となったのは、王将リーグを6戦全勝で駆け抜けてきた羽生善治三冠でした。七番勝負はフルセットの激闘となり、勝ったのは渡辺王将でした。最強の挑戦者を相手に堂々の防衛、王将戦2連覇を達成します。2014年度の第64期王将戦は3連覇をかけて挑戦者郷田真隆九段との七番勝負となりました。2年連続のフルセットの激闘でしたが、渡辺王将は敗れてしまいます。

王将位の失冠により第65期は王将リーグでの戦いとなりますが、1勝5敗でリーグからも陥落。そして今年、二次予選から登場した渡辺竜王は初戦で佐藤天彦名人に勝ち、決勝で広瀬章人八段に勝利して再び王将リーグ入りを果たしました。今期王将リーグでは、郷田王将からのタイトル奪還を目指すべく戦っています。

伝説の勝者記念写真

近年の王将戦七番勝負には将棋ファンの間で名物となっている恒例行事があります。対局に勝った棋士は翌日の新聞にちょっと面白い格好をした写真が掲載されるのです。松尾芭蕉のコスプレをして一句読んだり、幼稚園に行ってブランコに乗ったり、忍者に囲まれたり、雪かきしたり、ウナギのつかみ取りに挑戦したり、足つきの将棋盤をテーブルに乗せてなぜか海岸で将棋を指したり...。普段絶対に見られない対局時の真剣な表情とのギャップ満載なトップ棋士の姿は、これまでおおいに将棋ファンを喜ばせてくれていました。

この『勝者記念写真』で数々の素晴らしい伝説を残してくれたのが渡辺竜王です。満面の笑みで安来節(どじょうすくい)を踊ったり、露天風呂に入りながら朝刊を読んだり、颯爽と自転車で登場したり、足湯に浸かりながらモーニングコーヒーを飲んだり、戦国武将の甲冑を着たりした渡辺竜王の素晴らしい写真は将棋ファンの間で語り草となっています。

そんな数々の伝説の『勝者記念写真』、渡辺竜王にとってはこれも大切なファンサービスなのです。渡辺竜王が王将戦七番勝負に登場し、そして対局に勝った暁には翌日の新聞でどんな写真が見られるのか、と楽しみにしているファンは多いのではないでしょうか。しかし、それにはまず今期の王将リーグを戦い、挑戦者にならなければいけません。

渡辺竜王は今期が6回目の王将リーグ入りとなります。過去5回の成績は挑戦1回(奪取1回)、残留2回、陥落2回となっています。果たして今期の成績はどうなるのでしょうか。渡辺竜王ファンは七番勝負の舞台に登場し、満面の笑みで『勝者記念写真』に納まるその雄姿を待っていることでしょう。そんな渡辺竜王の王将リーグにぜひご注目ください!

*写真はすべて王将戦中継ブログより引用。

おすすめの記事

棋士・棋戦

2024.01.16

里見、2年連続の挑戦を跳ね返す