将棋ファンがタイトル戦現地イベントに行くべき理由。解説会からサイン会まで、丸一日楽しめる!

前回のコラムではタイトル戦の『前夜祭』についてご紹介しました。しかし、前夜祭はあくまで前夜祭、メインとなるイベントは対局当日にあります。タイトル戦の開催地のホテル・旅館では多くの場合、現地イベントを開催します。ゲストのプロ棋士を解説者に招いての大盤解説会、指導対局会やサイン会、お楽しみ抽選会なども行われることがあります。今回は、先日行われた第6期リコー杯女流王座戦第1局の現地イベントの様子に触れながら、タイトル戦の現地イベントって何? どんなことをやっているの? ということをご紹介したいと思います。

現地イベントの大盤解説会は一味違います

タイトル戦の中継ブログには、『現地イベントの様子』という記事がアップされていますのでご覧になったことがある方も多いと思いますが、現地イベントではいったいどんなことが行われているのでしょうか。基本的に現地イベントでやっていることといえば、メインはやはり『大盤解説会』です。対局場で行われているタイトル戦の対局の指し手を、大盤を使って解説をしてくれるので、会場全体の臨場感と一体感はひと味もふた味も違います。こればっかりは現地に行かないと味わえません。

会場によっては対局室の様子をモニターで映してくれるので、棋士の一挙手一投足を思う存分見て楽しむことができます。また、現地には多くの棋士が来ています。立会人、新聞解説はもとより、勉強に来ました、と当初イベント参加予定じゃなかった棋士がふらりと現れることもあります。そんな多数の棋士が入れ替わりで解説をしてくれるのも現地イベントならでは。解説者と聞き手の組み合わせによっては思いがけないコラボ効果が表れて、ぶっちゃけトークや、素晴らしいリアクション、漫才のようなやりとりを堪能できたりもします。


第6期リコー杯女流王座戦第1局の現地イベント、大盤解説会の様子。


解説者と聞き手は適宜交代していきます。


女流棋士が聞き手とは限りません。男性二人の解説もまた楽しい。

現地イベントで指導対局を受けよう!

現地イベントでは大盤解説会と並行して指導対局が行われることも多いです。特に地方でのイベントでは普段なかなか会えない棋士の指導対局を受けられるチャンスということもあり、多くの場合は希望者多数で抽選が行われます。もしも当たったらラッキーですね!ちなみに、「私全然弱くて...」「駒落ちの定跡を勉強していないので...」といった理由から指導対局を受けるのを遠慮する方も多いのですが、むしろそんな方にこそ進んで指導対局を受けていただきたいと思います。棋士は何しろその点「プロ」ですから、その方に合った指導をきちんとしてくれますし、わからないことはどんどん質問してその場で教えてもらえばよいのです。『棋は対話なり』という言葉通り、1局の指導対局を通して棋士と交流をすることで、たくさんおしゃべりをしたのと同じくらいにいろいろなことがわかり合える、そんな経験になると思いますよ。


山口絵美菜女流1級の指導対局。


北浜健介八段の指導対局

対局の後は感想戦。わからないことや、指す手に困った局面があったら、どんどん質問しましょう。もし途中で失敗して悪い手を指してしまったら、そこでどうすればよかったか、アドバイスをもらえば身に沁みて覚えるので、香車一本くらい強くなれるかも。普段なかなか会えない棋士の指導対局を受けられる絶好の機会、それが現地イベントなんです。

サイン会で憧れの棋士の色紙・直筆扇子をゲット!

現地イベントでのお楽しみといえば、サイン会!憧れの棋士の直筆色紙や直筆扇子が手に入る千載一遇のチャンス!もちろん有料ではありますが、実はサイン会は色紙や扇子にお金を払っているだけではありません。サインをしてもらっている間に、棋士と話したり、書いた色紙を持って写真を撮らせてもらったり。そんなふうに棋士との交流ができるということに、お金を払っていると思えば、決して高くはありません。憧れの棋士とのひととき、プライスレスです。ちなみに、熱心なファンともなると、過去のイベントなどで応援する棋士に毎回色紙を書いてもらい、気が付けば数十枚単位で色紙を持っているという方もいらっしゃいます。

それだけたくさんの色紙を書いてもらうと、揮毫のレパートリーもほぼそろってしまうので、その場でリクエストした言葉を書いてもらったりすることもあったりします。(※初めて色紙を書いていただくような場合は、揮毫は棋士にお任せするのが無難です)


「今日は何て書きますか?」ファンのリクエストに気さくに応える室谷由紀女流二段。


井上慶太九段のサイン会の様子

お楽しみ抽選会でレアアイテムをゲット!

現地イベントでは抽選で色紙や棋書、扇子などが当たるお楽しみ抽選会を行うことがあります。時にはそこで実際に使われた『封じ手用紙』がプレゼントされたこともあります! また、大盤解説会でも正解者の中から抽選で景品が当たる『次の一手クイズ』が出題されるのもほとんどの現地イベントでの定跡となっています。タイトルホルダーと挑戦者の色紙が当たったら、一生の記念になりますね!


正解者の中から抽選をする井上慶太九段


色紙の当選者の名前を読み上げる井上慶太九段。

終局後にタイトル戦を戦った両対局者が!

現地イベントの最大の楽しみ。それは対局が終わった後、両対局者が会場に来てくれることがある、という点です! 両対局者は現地解説会場の大盤で簡単な感想戦を行い、対局についてのコメントや、会場のお客さんへの挨拶などをしてくれるわけで、ファンにとって本当にありがたい限りです。そうやって対局直後の生の声を聞くことができるのも現地イベントならではの特典ですね。


第6期リコー杯女流王座戦第1局、両対局者が解説会場に来てくれました。


大盤でポイントとなった局面を振り返ります。

タイトル戦の現地イベントの魅力をお伝えしました。実は現地イベントの多くは、安ければ1000円程度の参加費で入場できます。それでほぼ1日楽しめるという大変コストパフォーマンスに優れた催しといえるでしょう。あなたの応援している棋士が出演していたり、あなたのお住まいの近くで開催されていたら、現地イベントに足を運んでみてはいかがでしょうか? 絶対に楽しいことを保証しますよ!

※写真はすべて2016/10/26第6期リコー杯女流王座戦第1局の現地イベントで筆者撮影

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