今回は香の手筋を紹介していきます。
香は4隅に配置されており、障害物がない限りまっすぐどこまでも利くのが特徴です。角の利きに置かれていますので、対抗形では特に持駒となりやすい駒です。駒の価値は歩の次に低いとされていますが、使いこなせれば強力な駒です。
今回は様々な手筋を見て行きましょう。
駒をつらぬく田楽刺し
【第1図】
香は別名「ヤリ」とも呼ばれるように、利きが直線であることが特徴です。
第1図の右側では▲2三香と打つ手が厳しく、角を逃げれば飛車が取れます。頭の丸い角は香に弱く、角の後ろに駒がいる場合は注意が必要です。香車を串に見立てて、「田楽刺し」と呼ばれる手筋です。
頭の丸い駒でなくても、支える駒があればこのような串刺しが利きます。第1図左がそれで、△8七香と打つ手が厳しい寄せになります。玉が後ろにいるため、金をかわすことができません。
飛車を捕獲する香車
次に飛車を捕獲する手筋を見ていきましょう。飛車は縦にも横にも大きく動ける駒なので、捕まえることはそう簡単ではありません。ただ、香車は逃げる飛車と相性が良く、合駒に歩を打てない至近距離で打つことができれば、飛車を捕まえることができます。
【第2図は△8六同飛まで】
実際に例を見ていきましょう(少し難しい手筋の組み合わせです)。
第2図は後手が△8六歩▲同歩△同角▲同角△同飛と交換したところ。ここで▲8七歩や▲8七銀ならじっくりとした戦いとなりますが、この場合は別の手があります。それが▲2二角で、後手は駒損を避けるために△3三角と合わせるしかありません。
対して▲3三同角成は△同銀で何も起こりませんが、▲1一角成と香車を取ってしまうのが好手。以下△1一同角▲8七香で飛車を取ることに成功します(ただし形勢は簡単ではありません)。
敵歩の裏に打つ香
【第3図は△2二銀まで】
香の弱点は前にしか進めないので、歩で利きを止められてしまうことには注意しましょう。逆を言うと相手が歩切れの時は、持駒の香車の価値が普段の倍以上であるとも言えます。
歩を打てない、という状況は敵歩の裏に打つ場合も同様です。第3図は角換わり棒銀のある変化より。ここから手筋の組み合わせで攻めを成功させましょう。
第3図でまずは▲1一歩成と成り捨てます。後手は△同銀と取るよりありませんが、そこで▲8四香と敵歩の裏に打つ攻めがあります。
飛車を横に逃げれば▲8一香成があるので後手は△8四同飛と取りますが、▲6六角と打つ手が飛車銀両取りで成功です。なお、駒の配置によっては先に▲6六角を打って▲8四香を狙いにする手が有力な場合があります。
重ね打ちで穴熊を攻略!
香車は直線で利きが通るため、重ね打ったり飛車と協力すると分かりやすい数の攻めができます。飛車と協力する攻めとしては矢倉戦の「スズメ刺し」が有名ですが、穴熊の端を攻略するのに香車を重ね打つのも有力です。タイトル戦で実現したのが第4図の局面です。
【第4図は▲2一龍まで】
先手の穴熊は金銀3枚に底歩で非常に堅いのですが、端を攻められたら別です。第4図から△9四香打!で飛香香の三段ロケットが実現。8五の桂馬もいて、破壊力抜群です。
以下▲8五銀△同銀▲7七桂打と受けたものの、△7三桂▲6一角△9六歩から端攻めを炸裂させて後手が勝ちきりました。こんな攻めを実現させられたら気持ちが良いでしょうね。
底歩を突破する香打ち
【第5図】
「金底の歩」は非常に堅いのですが、弱点があります。それが香打ちの攻めです。歩が最下段にあるがために、歩を打って香の利きを止めることができないからです。第5図のような例がそれで、5筋に香を打つ手が厳しいです。
5三に合駒をしても▲同香成~▲5一飛成ですし、△6二金とかわす手にも▲5一香成や▲5一飛成が厳しいです。
第6図はおまけで、香を使った美濃崩しです。考えてみて下さい(答えは最後にて)。
【第6図】
下段の香に力あり、破壊力抜群の香車をつかいこなそう!
今回は紹介できませんでしたが、「下段の香に力あり」という格言があります。香はまっすぐ利く駒なので、下段になるほど利いてくるマス目が増えるからです。
一見地味な駒ですが、使い方によってはかなりの破壊力のある駒です。歩で止められる展開にだけは気を付けていきましょう。
第6図の答えは▲6二香△7一金▲5三角で、次に▲7一飛成△同玉△6一香成の寄せが受けづらいです。歩が利けば歩でも問題なく、歩の代わりに香を使う例でした。