将棋によって得られる4つの成長。仕事に活きるロジカルシンキングを鍛えるのにピッタリ

将棋によって得られる4つの成長。仕事に活きるロジカルシンキングを鍛えるのにピッタリ

ライター: 佐藤友康  更新: 2016年12月01日

大人になってからあらためて将棋と向き合うと、ただのゲームではない、少し違った見え方もあります。将棋にちょっと興味を持ったときに知っておきたい、秘められた将棋の魅力をご紹介していきます。前編では、将棋を指しながら自然と体験できる3つの魅力を紹介しましたが、今回は自分自身の感情面、心の面に響く魅力を4つ取り上げます

魅力④ 『学んだだけ強くなれる』 自己成長の体感

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  • たった2ヶ月で別人のような成長が可能

全くの初心者の頃にはどう考えていいのかが分からず、あれこれ迷うものです。しかし、2ヶ月程取り組むと、自信を持って指せる手が出てきます。なかなか玉を詰ませられなかった人が、「頭金」という詰みの形を覚えるだけでも、詰ませる方法が分かり、実戦で使えるようにもなります。序盤も、戦型を少し学ぶことで玉の囲いをスムーズに指せるようになります。たった2ヶ月でも、別人になるような成長を実感できます。

  • 「知っている」だけでも自信になる

知らないことはうまく指せなくて当然です。学習を通じて自信のある手を指せるようになると、結果的に勝ちにつながり、学んだだけ強くなれるという成長を自分自身で感じることができます。周りの将棋仲間も、強くなっている様子はすぐに気付きますから、きっと温かな言葉をかけてくれます。努力の結果として、成長を体感できることは将棋の持つ魅力の一つと言えるでしょう。

  • 客観的な成長記録を測れる「昇級」や「レーティング」でという仕組み

また、「強くなっている」という自分自身の評価だけでなく、客観的に測れる仕組みがあります。道場に行ったり、将棋アプリを使ったりすることで、級位やレーティングという数値での測定ができます。少しずつ、着実に上がっていくことで、自分の成長をより実感できることでしょう。

  • 事実の認識が、自己成長につながる

普段の仕事中心の生活の中では、自分自身を振り返る機会が多くはないかもしれません。他人との比較ではなく、自分ができるようになったことに目を向けましょう。学んだことはすべて自分の知識になり、経験になる、自己成長を感じられるという、将棋の魅力を味わってください。

魅力⑤ 真剣勝負を通じて、自分自身の『感情』を味わえること

  • 真剣勝負は感情を引き起こす

将棋は、引き分けがほとんど存在せず、勝ち・負けがハッキリする真剣勝負です。真剣に考えるからこそ、勝てば嬉しく、負ければ悔しいのです。真剣に指せば指すほど、どちらの感情も強まります。特に、負けた時には、悔しさが付きまといます。負けて悔しいからこそ、次に勝てるように感想戦を行いましょう。研究して、実際に次に勝ったときには倍以上の嬉しさを感じられるものです。

  • 将棋の感情は新鮮で濃厚

最近感じた、心から悔しかったこと、嬉しかったことは何でしょうか? 大人になるに連れて、感情を表に出す機会は徐々に減り、本気で嬉しがったり、本気で悔しがったりできる機会は少なくなってはいないでしょうか? 将棋の指し手の決定権は自分にあるので、完全に自己責任なのです。ですから、感想戦では余計なことを考えずに自分の素直な感情を濃いままの状態で、しかも、対局直後の新鮮な状態で味わうことができるのです

  • 感情豊かな方が棋力も上がりやすい!?

脳科学の世界では、「感情を伴う経験は、記憶が定着しやすい」という研究結果もあります。子供の将棋大会では、負けたのが悔しくて泣いてしまう子がたまにいますが、泣いている子ほど強くなると言われます。感情豊かに、負けたときの悔しさを指し手と共に記憶して、次に活かすことができるのでしょう。

魅力⑥ 『負けました』で終わるということ

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  • 負けの宣言で対局が終わる過酷なゲーム

将棋の一局は、「負けました」という発声で勝負が終わります。時間切れや反則手の場合は、「指した瞬間、即負け」になりますが、普通の対局では、「負けました」という発声が勝負の終わりの合図です。終盤戦の詰むや詰まざるやの攻防が終わり、もうこれで負けだ・・・と思った方が、その負けを相手に伝えなければならないのです。それはつらく、過酷な一面に映るかもしれません。

  • 負けてこその人間的な成長が

「負けました」と伝えるときには、悔しさと反省とが入り交じった感情があります。しかし、悔しいだけでは終わらずにそれを乗り越えて、すぐに感想戦で振り返ります。だからこそ、成長があるのです。負けてなお、感想戦を指せる心を育てているんです。負けた側が勝った側以上に人間的な心の成長を遂げる可能性のある、「負けました」で終わるという文化に将棋の魅力を感じます。

  • 将棋は負けも楽しむゲーム

将棋は、実力の近しい人と指すのが一番楽しいですから、勝ち続けるのは難しいゲームです。トップ棋士でも、勝率は高くて7割ほどですから、10回に3回ぐらいは負けるものです。負けた瞬間は悔しいでしょうが、負けを素直に認められる謙虚な心や、悔しいながらも「負けました」と言える精神力を鍛えましょう。悔しい感情を味わいつつも、自分の心を鍛えていける、それさえも魅力と感じてほしいと思います。

魅力⑦ 『状況判断する力が身につく』ということ

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  • 刻一刻と変わる状況にその都度対応する

お互いに一手ずつ交代で指していき、相手の玉を詰めるように進めていくのが将棋です。パスすることも、二手連続で指すこともできません。一手ずつ指すのは、囲碁やチェス等のゲームにも共通することですが、「取った駒を再利用できる」というルールのある将棋は、数手で状況が一変することもあります。ついさっきまで玉の守りだった駒が、相手に取られた瞬間には「相手の攻め駒」になるわけですから。そんな状況を、随時判断していく必要があります。

  • すべての情報は盤上に

刻一刻と変わる状況から、情報を拾い上げ、自分の指すべき次の一手を決めていくわけです。考えるための材料となる情報はすべて盤の上に揃っています。自分だけの秘密、相手の秘密は一切無く、情報はお互いに平等です。しかし、その情報から何を読み取るかは自分次第で決まってきます。将棋を指すことで、状況を客観視して、それを判断する力が身に付くことができることも、将棋の魅力の一つです。

  • 形勢判断のうえに、自分の求める将棋の方向性を乗せる

将棋における形勢判断は、主に4つの要素で行います。駒の損得、駒の働き、玉の堅さ、手番。これらを客観的に判断し、次の指し手を決めていくのですが、同じ形勢判断をしたとしても、次の一手はひとつに決まりません。プロだとしても、どんな手を指すかは人によって変わってくるのです。

では、「何」によって次の一手が決まるのでしょうか? それは、今までに自分が指してきた将棋の経験・知識と、自分がどんな将棋を指したいかの方向性です。形勢判断のうえに、自分の求める将棋の方向性を乗せて、一手が生まれてくるのです。

  • 指し手を考える過程を応用してみよう

現実の世界に置き換えてみても、客観的な情報を集め、それをもとに決断するには、将棋の一手を決めることと同じような思考の過程をたどります。与えられた情報を基に状況を整理して、押すべきか、引くべきか、冒険すべきか、安全な方法を取るべきか。行動を決める材料には、自分自身の経験・知識・そして何を求めるかの方向性があるのです。将棋を指すことを通じて、状況判断をする力を養い続けることができます。この思考の過程は、実世界にも応用できることでしょう。

ゲームを超越する将棋の魅力の数々を体験しよう

いかがでしたでしょうか。今回は、7つの魅力のうち、残りの4つを取り上げました。自身の感情や成長の実感など、普段は意識していないことも、将棋を通じて味わうことができるのです。前回の3つとも合わせて、現実社会に応用できる「状況判断」も身に付けることのできる、思考のトレーニングに最適なものだと筆者は考えています。まずはぜひ一度、将棋を指せる環境に足を運んでみてはいかがでしょうか。そこで将棋を覚えて、指して、より一層将棋の虜(?)になることを楽しみにしています。

佐藤友康

ライター佐藤友康

3歳から将棋に触れ、将棋とともに幼少期を過ごすものの、途中、長い長いブランクを経て、27歳で将棋復活。 2015年4月より、池袋で20代・30代に向けた将棋普及活動『将Give』を主催・運営する。 将棋の楽しさ・面白さ・奥深さに深く感動し、将棋普及と将棋を通じた社会貢献・人間的な成長の応援を使命とする。

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