羽生vs渡辺、100年に1度の大勝負。12月18日は初永世竜王が誕生した日【今日は何の日?】

羽生vs渡辺、100年に1度の大勝負。12月18日は初永世竜王が誕生した日【今日は何の日?】

ライター: 夏芽  更新: 2016年12月18日

竜王戦は読売新聞社が主催する棋戦で、1950年に発足した「九段戦」に始まり、さらには26期続いた「十段戦」を発展解消する形で1987年に創設された。これまでに初代竜王の島朗をはじめ、8人の竜王獲得者が誕生している。永世竜王の資格は「通算7期か連続5期」。2008年の第21期竜王戦七番勝負では、初代永世竜王を目指し、ふたりの棋士が相まみえた。

ひとりは現竜王の渡辺明。第17期(2004年)に当時20歳で森内俊之竜王からタイトルを奪うと、その後は木村一基七段、佐藤康光棋聖(2回)の挑戦を退け、4連覇を達成。この第21期で防衛を決めれば連続5期となり、永世竜王の資格を得ることになっていた。

そしてもうひとり、挑戦者として勝ち上がってきたのが羽生善治名人である。すでに竜王獲得通算6期としていた羽生も、永世竜王まであと1期。さらに羽生は、この年の6月に名人に返り咲き、十九世名人、6つ目の永世称号を得ていた。つまり、この第21期で竜王を奪取すれば「永世七冠」という大偉業の達成でもあった。

勝ったほうが初代永世竜王

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世間の注目を集めたシリーズは、フランスのパリで開幕。羽生が第1局から3連勝し、一気に永世竜王へと近づいた。それまで将棋界では七番勝負で「3連敗からの4連勝」というスコアはなく、この時点でほとんどの将棋ファン、関係者が羽生の永世七冠誕生を疑わなかったであろう。しかし第4局、渡辺がぎりぎりの受けでカド番をしのぐと、そこから流れが一転する。続く第5局、第6局は内容でも圧倒し、シリーズは3勝3敗でフルセットまでもつれ込んだ。

この時点で最終局には、初代永世竜王、永世七冠に、もうひとつ「史上初の3連敗4連勝」という要素が加わったのである。

最終第7局は将棋の町と言われる山形県天童市、「ほほえみの宿 滝の湯」で行われた。ふたりの運命を分けたのは図の局面。

【図は106手目△5五歩まで】

羽生は▲2四飛と詰めろをかけたが、ここは▲4八飛を選ぶべきだった。そして△6四歩の王手に▲5五玉とかわした手が敗着(▲7五玉なら難解)となり、渡辺が△4四銀打以下、流れを引き寄せる。2008年12月18日19時30分、羽生が投了。渡辺が「100年に1度の大勝負」を制し、初代永世竜王に輝いた。

その後、渡辺は竜王獲得を通算10期まで伸ばし、羽生の永世七冠はいまだ達成できていない。この一局の勝敗が持つ意味は、とてつもなく大きかったと言える。

今日は何の日?

夏芽

ライター夏芽

2011年から関西を拠点にインターネット中継記者として活動。将棋は指すより見て楽しむタイプ。暇さえあれば書店の将棋コーナーに足を運んでいます。

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