森内VS千田。ついに出揃ったベスト4、棋王戦挑戦者決定トーナメントの展望を読み解く(千田五段のコメントあり)

森内VS千田。ついに出揃ったベスト4、棋王戦挑戦者決定トーナメントの展望を読み解く(千田五段のコメントあり)

ライター: 渡部壮大  更新: 2016年11月09日

ベスト4出揃う

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第42期棋王戦挑戦者決定トーナメントもベスト4が出揃い、いよいよ大詰めだ。第31期棋王の森内俊之九段、前期挑戦者の佐藤天彦名人と実績十分の2人に対し、1994年生まれの22歳、佐々木勇気五段と千田翔太五段が挑む構図だ。前編では千田五段にスポットを当てていく。

通常のトーナメント戦と異なり、棋王戦のベスト4以降はいわゆる2敗失格制となる。1敗しても敗者復活戦でチャンスが残るのが特徴だ。前期の佐藤天彦八段(当時)も、勝者組決勝で敗れてから勝ち上がり、挑戦者決定二番勝負で佐藤康光九段に連勝して挑戦権を得た。

森内俊之九段と千田翔太五段の準決勝

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森内俊之九段─千田翔太五段戦は11月10日に行われる。両者は居飛車がメインのため、角換わりか相掛かり、矢倉が予想されるところだ。今期の森内は黒星が先行しているが、棋王戦ではライバルの佐藤康光九段をはじめ、3連勝でベスト4まで勝ち進んできた。ここで存在感を示したいところだろう。

森内と千田は第55期王位戦の挑戦者決定リーグ紅組2回戦で対戦がある。森内は当時竜王・名人、千田は新四段だった。1回戦で森内は白星、千田は黒星で本局を迎える。棋界の頂点と新四段では格の差は明らかだが、千田が勢いのある指し手を見せた。

【第1図は93手目▲3四歩まで】

相掛かりからねじり合いで終盤戦を迎えた。第1図で歩頭へ△2七角!が豪打。▲同歩△同飛成は許せないと見て▲6四桂と詰めろをかけたが、△4一玉▲3三歩成△3六角打が好打で後手が勝った。この勝利で勢いに乗った千田は3回戦以降も勝ち、4勝1敗で紅組優勝、挑戦者決定戦へと進んだ。挑戦者決定戦では木村一基八段に敗れたものの、その実力を広く知らしめた。

予選からの勝ち上がり

今期の千田は予選からの勝ち上がり。印象に残る対局を聞くと、準々決勝での久保利明九段との将棋を挙げた。「ミスはありましたが、悪くない内容だったと思います」。

【第2図は64手目△4三銀まで】

図がその将棋。久保九段のゴキゲン中飛車に、千田は超速▲3七銀から中央を制圧し、リードを奪う。第2図から▲6三桂△3四銀▲5一桂成△7一金▲5四角△3八飛▲5八金引△4三銀▲6一成桂からさわやかに寄せて快勝した。

千田にここからの抱負を尋ねると「日頃の行動が反映されるのみです」とあっさりした答え。目の前の将棋を勝つことよりも、長期的な棋力の向上を信条とする千田らしさが出ている。実力が上がれば自然に結果がついてくるということだろう。

後編では佐々木勇気五段のコメントとともにお送りする。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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