初タイトル獲得なるか?!人気、実力ともに注目の室谷由紀女流二段の紹介

初タイトル獲得なるか?!人気、実力ともに注目の室谷由紀女流二段の紹介

ライター: 直江雨続  更新: 2016年11月05日

いよいよ11月8日(火)から大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負が開幕します。現在倉敷藤花のタイトルを持つのは里見香奈女流四冠。倉敷藤花6期の実績を持つ、クイーン倉敷藤花資格保持者です。そんな最強のタイトルホルダーに挑むのは今期トーナメントを勝ち抜いた室谷由紀女流二段。注目の三番勝負を観戦するための予備知識として、室谷女流二段のこれまでの倉敷藤花戦での活躍を中心にご紹介します。

女流棋士デビューとスピード昇級

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室谷女流二段は1993年3月6日生まれの23歳。大阪府大阪狭山市出身、森信雄七段門下。2009年10月1日付で女流3級でデビュー。10月のデビューのためすでに春からトーナメントが進行していたこの年の倉敷藤花戦には出場できませんでした。2010年、室谷女流3級(当時)は第18期倉敷藤花戦に出場し、1回戦で林まゆみ女流二段(当時)に勝ち、2回戦で村田智穂女流初段(当時)に敗れてこの年のトーナメントを終えます。

同年の7月17日の第4期マイナビ女子オープン予選の初戦で勝利し、女流2級への昇級規定「1年間で参加公式棋戦数(5棋戦)と同数の勝星(5勝)を得る」を満たし、同日付で女流2級に昇級。さらにこの日の2局目にも勝ち、女流1級昇級の規定の一つである「マイナビ女子オープン本戦入り」に該当したことにより、同日付で女流1級に昇級。1日で2回の昇級という珍しい記録を作りました。また、この年度で「女流1級で指し分け以上(7勝以上)」を満たしたため、2011年4月1日付で女流初段に昇段。1年に満たない短期間のうちに一気に女流3級から女流初段へのスピード昇級を果たしました。

参加2年目の倉敷藤花戦で挑戦者決定戦へ!

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2011年の第19期倉敷藤花戦、2度目の出場となった室谷女流初段は快進撃を見せます。1回戦はシード、2回戦で鹿野圭生女流初段(当時)に、3回戦で室田伊緒女流初段(当時)に勝利してベスト8進出。準々決勝では昨年敗れた村田女流初段(当時)へのリベンジを果たし、準決勝は上田初美女王(当時)に勝利して自身初の挑戦者決定戦へ進出しました。

この勝ち上がりには将棋ファンも新たなスター誕生か!と大いに盛り上がりました。そして迎えた2011年9月29日、倉敷藤花戦挑戦者決定戦。室谷女流初段の相手は清水市代女流六段でした。後手となった室谷女流初段はゴキゲン中飛車を採用。清水女流六段は序盤から機敏な仕掛けで桂得を果たすと、さらにその得した桂馬を使って角銀交換で駒得を拡大しさらに成桂を作る戦果を挙げて優位を拡大。終盤での攻め合いで差を詰める室谷女流初段ですが、その切っ先は清水女流六段には届かず。この年の倉敷藤花戦の挑戦者は清水市代女流六段となりました。敗れはしたもののデビューから2年での挑戦者決定戦進出により、室谷女流初段の名前は広く将棋ファンに知られることとなりました。そして室谷女流二段といえば、女流棋戦での活躍のほか、普及面でも注目の女流棋士です。

西遊棋に欠かせない人気者

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室谷女流二段はデビュー当時から2014年3月までは関西所属の女流棋士として、主に関西での将棋イベントや、関西若手棋士ユニット『西遊棋』のメンバーとして活躍しました。特に『西遊棋』では、大盤解説会での聞き手や、イベントの司会、席上対局や指導対局、サイン会やグッズの販売担当などなど、あらゆるシーンに欠かすことのできない人気者として、将棋ファン拡大におおいに貢献していました。そんな中、室谷女流二段は2014年4月1日付で関東への移籍を発表。この発表に落胆する関西のファンと、喜ぶ関東のファンは多かったのではないでしょうか。

関東移籍後の戦績は?

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関東に移籍後、室谷女流二段はNHK杯テレビ将棋トーナメントの読み上げを2年間務めたほか、今度は関東若手棋士ユニット『東竜門』のメンバーとしても各種将棋イベントに参加。また、将棋の実力も関東移籍後は急上昇。2015年度のマイナビ女子オープンでは予選、そして本戦トーナメントを勝ち上がり、挑戦者決定戦で西山朋佳奨励会三段に勝って、自身初のタイトル戦の登場を決めました。結果は加藤桃子女王に1勝3敗で敗れてタイトル獲得はなりませんでしたが、その強さは十分に知れ渡りました。

ついに挑戦者へ! 今期2度目のタイトル戦登場!

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挑戦者決定戦まで勝ち上がった第19期以降、倉敷藤花戦での室谷女流二段の成績は第20期はベスト8、第21期と第22期はともに2回戦で、第23期は準決勝で里見女流名人・女流王位に敗退という結果でした。そして今年の第24期倉敷藤花戦。1回戦はシード、2回戦は安食総子女流初段、3回戦は熊倉紫野女流初段、準々決勝は岩根忍女流三段、準決勝は中井広恵女流六段に勝利。挑戦者決定戦では、上田女流三段に勝って自身二度目となるタイトル戦挑戦を決めたのです。

室谷女流二段の倉敷藤花戦でのこれまでの実績を見ていただきました。生粋の振り飛車党で、その鋭い攻めと卓越した序中盤のセンスが魅力の室谷女流二段。先日放送されたNHK将棋フォーカスでも特集が組まれるなど、人気、実力ともに注目の女流棋士です。また、連盟書道部で書の腕を磨き、フットサル部でも活躍するなど、まさに文武両道。今回の倉敷藤花戦で初タイトル獲得となるのでしょうか。室谷ファンのみならず、全将棋ファン注目の決戦は間もなくです!

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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