王将戦挑戦者決定リーグを戦う7人を紹介! 王将リーグでの深浦康市九段の実績を紹介

王将戦挑戦者決定リーグを戦う7人を紹介! 王将リーグでの深浦康市九段の実績を紹介

ライター: 直江雨続  更新: 2016年11月08日

今期の王将戦挑戦者を決める『第66期王将戦挑戦者決定リーグ戦』が開幕しました。このコラムでは王将リーグを戦う7人の棋士をご紹介していきます。第4回は深浦康市九段です。王位のタイトル獲得3期のトップ棋士、深浦九段のこれまでの王将戦でのエピソードや王将リーグでの実績を読んでいただき、王将リーグ観戦に役立てていただければと思います。

深浦九段のこれまでの王将戦

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深浦九段は1972年2月14日生まれの44歳。長崎県佐世保市出身で、師匠は(故)花村元司九段。タイトル戦登場回数は8回、獲得は王位3期、棋戦優勝9回、竜王戦は1組(1組8期)、順位戦はA級(A級8期)。現代を代表するトップ棋士のひとりです。

深浦九段の将棋で印象的なのは、どんなに悪くなっても簡単にあきらめずに、刀折れ矢尽きるまで不屈の根性で粘り強く逆転を狙って指し続けるその姿勢です。深浦九段は小学校卒業後、まだ12歳の時に故郷の佐世保から親類を頼って上京し、プロ棋士を夢見て奨励会に入会。地元の期待を一身に背負って修業時代を過ごしてきました。その経験が不屈の精神の源なのかもしれません。「九州にタイトルを持って帰る」ことが、地元佐世保を愛し、地元のファンに熱列に愛されている深浦九段の最大のモチベーションとなっているのです。

深浦九段が初めて王将リーグ入りをしたのは、プロデビューから実に14回目の挑戦となった2005年度第55期のことでした。初めての王将リーグでの成績は2勝4敗。結果は陥落でした。翌年は二次予選で敗れてリーグ入りできず。その翌年の2007年度には初のタイトル王位を獲得すると、その勢いのまま二次予選を勝ち上がりリーグ入り。しかし、結果は3勝3敗でまたも陥落となります。2008年度、王位戦で羽生名人の挑戦をはねのけて防衛を果たすと、2年連続で二次予選を勝ち上がって王将リーグ入り。そしてまれに見る混戦となった王将リーグでは4勝2敗で1位となり、羽生王将に挑戦することとなりました。

この第58期王将戦七番勝負が始まったのと同時期、「将棋世界」2009年2月号で深浦九段の兄弟子、森下卓九段の自戦記に書かれた言葉が印象的だったのでご紹介します。

深浦王位は、根性の男である。深浦王位ほどの根性が自分にあったならと、どれほど思ったかしれない。<中略>深浦君は、三段リーグでもC2順位戦でも長く苦労したが、腐ることなく努力を続けたのは立派というより他はない。しかも、その努力を現在に至っても持続していることには、頭が下がる。奨励会時代、あるいは若手の時に深浦君ぐらい努力した棋士は多いかもしれない。しかし、三十半ばを過ぎても深浦君ほど努力している棋士は数人だろう。

羽生王将との熾烈な七番勝負

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そんな兄弟子の言葉通り、不断の努力を続けていた深浦王位は羽生王将を相手に互角に渡り合ってきました。第58期王将戦七番勝負もまた深浦王位の努力と根性を見せつけるような激闘となりました。特に印象的なのが戦型のレパートリーの広さです。

第1局は深浦王位先手で角換わり腰掛け銀同型の戦型となり、羽生王将が勝利。

第2局、後手番の深浦王位は△3三角戦法からの角交換型振り飛車で勝利。

第3局は後手番の羽生王将がゴキゲン中飛車を採用。結果は深浦王位が勝利。

第4局は羽生王将が角換わり腰掛け銀で勝利。

第5局は深浦王位が先手中飛車で勝って王将奪取に王手をかけます。

第6局、後手番の深浦王位は△3三角戦法からの角交換振り飛車。深浦王位が序盤早々4筋に振った飛車を5筋に戻して中飛車に構え直すという趣向を見せるなど、意欲的な指し回しでしたが、カド番の羽生王将が勝利してフルセットに。

最終第7局は、後手番の羽生王将の横歩取り8五飛戦法となります。結果は羽生王将が勝利して防衛となり、深浦二冠の誕生はなりませんでした。

見ていただいた通り、この時の七番勝負では両者が居飛車も振り飛車も指しています。さまざまな戦法で羽生王将に挑んだ深浦王位の研究量、努力の跡がうかがえます。

その後の深浦九段の王将リーグの実績

第58期王将戦七番勝負はフルセットの末、羽生王将の防衛。翌年の王将リーグに参加した深浦九段は3勝3敗で残留するも、第60期王将リーグは2勝4敗で陥落してしまいます。第61期では二次予選で敗退し、リーグ入りならず。しかし、ここからが根性の漢(おとこ)、深浦九段の真骨頂。第62期は一次予選からの出場となりますが、3連勝で二次予選へ。そこでも3連勝で予選を抜けて2年ぶりの王将リーグ入り。結果は4勝2敗で挑戦はなりませんでしたが、残留を決めると、そこから一度も陥落することなく、3年連続で残留を続けて今期に至ります。

深浦九段の王将リーグ挑戦は今期で10回目となります。過去9回の成績は挑戦1回、残留5回、陥落3回。プロ入りから14年目での初参加から今期まで、2度のリーグ入り失敗はあったものの、毎年安定した成績を残しています。もちろん今期こそは挑戦者として郷田王将からのタイトル奪還に名乗りを上げたいと思っているでしょう。

特に今年は長崎県対馬市出身の弟子、佐々木大地四段がプロデビューするなど、師匠としても心に期するものがあるはずです。努力と根性の九州男児、深浦九段の戦いぶりにぜひご注目ください!

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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