ライター直江雨続
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。
ライター: 直江雨続 更新: 2016年10月06日
最近将棋界ではフットサルが大ブーム。2016/06/10(金)にニコニコ生放送にて初中継された「将棋棋士東西対抗フットサル大会」、みなさまご覧になりましたか?関東チーム「FC SENDAGAJA」と関西チーム「FC FORTUNE ISLAND」がフットサルと将棋で真剣勝負を行いました。
普段スーツや和服姿で対局を行っているプロ棋士たちが揃いのユニフォームを着て、力いっぱいボールを追いかける姿は将棋ファンに大きなインパクトを残しました。そしてこの大会で無得点で敗北してしまった関東チームは、いま関西へのリベンジに燃えています!
今回、「FC SENDAGAJA」のキャプテンでもある渡辺竜王が代表を務める『将棋連盟フットサル部』の練習を取材してきました。練習とは言え「FC SENDAGAJA」の主力メンバーがほぼそろった豪華メンバーによる練習試合は迫力満点!みんな次なる試合に向けて闘志がみなぎっていました。
まずはこちら、渡辺明竜王です。「将棋棋士東西対抗フットサル大会」でも着ていた「FC SENDAGAJA」のユニフォームを身にまとい、フィールドを軽快に駆け回っています。鋭い切り込みからの正確なシュート。今回の練習試合でも私が見ていた範囲だけでも3ゴール以上決めていました。
練習試合は前後半通し(ハーフタイムなし)の7分間で1試合。メンバーを3チームに分けて2試合したら交代。そしてポジションも随時入れ替えて行っていました。こちらはキーパーを務めていたときの渡辺竜王の貴重な写真です。
渡辺竜王はそのよく通る声で後ろから的確な指示出しも行っていました。まさにチームを引っ張る司令塔。
二得点を決めた試合の後の満足げな竜王の笑顔をとらえました。今日の練習試合を見る限り、「FC FORTUNE ISLAND」へのリベンジマッチへの準備は万全といったところでしょうか
言わずと知れた現名人。佐藤天彦名人も今回の練習に参加していました。着ているユニフォームは「将棋棋士東西対抗フットサル大会」で横浜F・マリノス アンバサダー、日本将棋連盟親善大使の波戸康広さんから名人獲得のお祝いに贈られた特別な逸品。佐藤天彦名人のプレースタイルですが、なんといってもドリブルが華麗でうまい。ボールキープ力もあり、ハイライトはドリブルで切り込んで、3人抜きからのシュートを見事に決めたシーン。あまりにもかっこよすぎました!
ご覧ください、この背番号「74」(第74期名人)とその下に燦然と輝く「名人 佐藤天彦」の文字。この後ろ姿は惚れ惚れするようなオーラがありますよね。
試合前のウォーミングアップ、笑顔でパスをする広瀬章人八段です。過去に王位のタイトルを取り、現在順位戦ではA級に所属する、現代最強棋士のひとり。
広瀬八段の着ているユニフォームは、フットサル部の前身である将棋連盟サッカー部時代に作ったものだそうです。HIROの文字と背番号は14番。
人呼んで「将棋界のメッシ」。華麗なフットワークとボールさばきを見せていました。
近年の将棋界でのサッカーブーム、数々の「将棋×サッカー」イベントの大成功は野月七段がいたからこそ。将棋界とサッカー界の橋渡し役として有名です。札幌出身ということで、コンサドーレ札幌のサポーターでもある野月七段、今回ももちろんコンサドーレのユニフォームでの参加です。
今回の練習試合ではキーパーも務め、後方から味方にどんどん指示出しをするなど、ベテランの存在感を見せていました。もともと野月七段はフットサル部の前身のサッカー部で部長を務めていました。
フィールド後方から味方に的確な指示を出す野月七段。サッカーを知り尽くした棋士の頼もしい姿です。
抜け番で試合がないときも、ずっと熱心にフィールドでプレーする後輩たちを見守っていた視線が印象的でした。
「将棋棋士東西対抗フットサル大会」では「FC SENDAGAJA」でも随一の運動神経と紹介されていた佐藤和俊六段。今回の練習試合でもその評判通りに大活躍でした。特にすごかったのがシュートの威力と精度。
和俊六段からは本気を出せばあっという間にハットトリックを決めて試合を終わらせてしまえそうな、そんなオーラを感じました。次回の「東西対抗フットサル大会」では、キングカズのキャノンシュートを見られるでしょうか。
Eテレの将棋フォーカスの司会でもおなじみ。その端正なルックスとモデルのような細身の長身で女性ファンも多い中村太地六段です。準備運動をしていても人の目を引きつけるスターのオーラがありました。
ちなみに中村太地六段のユニフォームはサッカー元日本代表の小村徳男さんからのプレゼントだそうです。前期C級1組で1位となり、今期の第75期順位戦からB級2組に昇級したことを記念して背番号は75。その上に「B2」の文字。黒字に金の文字がとてもかっこいいですね。
こちら、試合終了後に座って休んでいるところにカメラを向けると、中村太地六段は「バテました」とご覧の笑顔。
瀬川五段は1970年3月23日生まれで現在46歳。1970年生まれってことは羽生三冠と同い年ですね。フットサルチームでは最年長ですが、軽快なフットワークとプレースタイルは若々しさを解き放っていました。
的確なディフェンスを見せる瀬川五段。フィールド全体を見渡す大局観でピンチを未然に防ぐ姿はまさに職人芸でした。
黒沢怜生五段は1992年3月7日生まれの24歳、男性陣では最年少。2012年からNHK杯で記録係を務めていたため、将棋ファンにはおなじみの顔。
今回は広瀬八段と同じオレンジチームだったので、この二人の華麗なパス回しが何度も見られました。
黒沢五段は俊敏かつ豊富な運動量でフィールドを縦横に駆け回り、シュートを狙っていました。次回の「東西対抗フットサル大会」は切り込み隊長として大活躍してくれるのではないでしょうか。
先日の「東西対抗フットサル大会」では関西チームに所属していた室谷由紀女流二段ですが、今は関東所属のため、普段は関東のフットサル部で練習しています。今回の練習試合でもその活躍は非常に目立っていました。
華麗なボールキープ。チャンスがあれば敵ゴール前から積極的にシュートも狙います。
ゴール前で決定的なチャンス!この時はキーパーの野月七段に阻まれてしまいましたが、別の試合では見事なゴールを決めていました。
ちなみに室谷由紀女流二段が着ているのは2016年の横浜F・マリノスのホームユニフォームですね。とても良く似合っていました。
先日の「東西対抗フットサル大会」では関西チームにて貴重な1得点を挙げて『得点王』となった高浜愛子女流2級。一躍その名を多くの将棋ファンに知られることとなりました。
ボールを奪った佐藤和俊六段が猛然とドリブル。遅れまいと攻め上がる高浜女流。スピード感のある一枚が撮れました。
高浜女流は相手の隙をつくのが非常にうまい印象です。ゴール前でフリーになって何度もチャンスを作っていました。さすがは「頑張って本気を出し」たら得点王に輝いた実力者!
今回は将棋会館を飛び出してフットサル場で棋士のみなさんを取材したわけですが、こんなシチュエーションは数年前では考えられませんでした。将棋界を飛びだしていろいろな方面でプロ棋士たちが活躍し、ファンがそれを喜ぶ。「将棋×サッカー」イベントや、ニコ生でのフットサルがきっかけで将棋に興味を持ち、棋士のことも応援してくれるサッカーファンが増えてくれたら素敵ですね。
ライター直江雨続