ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2016年09月28日
将棋の主役とも言える大駒。今回は角の紹介です。角は斜めにどこまでも利くのが特徴ですが、反面頭が丸く接近戦には弱い駒です。局面の風景を一手で変える攻防手を演出し、次の一手問題で使われる頻度が最も高い駒ではないでしょうか。また、馬になれば攻防ともに非常に強力な駒となります。角のテクニックを見ていきましょう。
【第1図】
終盤における角の強みを分かりやすく示したのが第1図です。図では次に△7八金などと絡まれると大変です。ここでは▲3五角と打つのが攻防手で、▲7一銀以下の詰めろになっています。仮に△6一金と受けてくれれば▲6八角と急所のと金を外して先手陣は安泰になります。このように、角には終盤の流れを一変させるほどの強さがあります。詰めろ逃れの詰めろや、詰めろ●●取りなどは実戦でもよく出てきます。
【第2図】
第2図は居飛車と振り飛車の対抗形の終盤戦です。ここで先手番なら▲4四角が第一感でしょう。△7七香などの攻めを受けながら、▲7一銀を見た攻防の絶好手です。図では▲3九歩なども有力ではありますが、逆に△4四角と打たれてしまいます。対抗形では4四、4六、6四、6六に設置した角は攻防の急所になるという例がよくあります。読む前にここに手がいくようになりたいですね。
【第3図】
相穴熊戦から第3図は△2五桂と金を狙われた局面。このままだと△3七桂成が厳しいので受けるしかありませんが、▲3八金引は△3七歩から攻められてしまいます。こういった局面で▲7三角(8二や9一も同様)が強力な馬を守備につける受けの好手。△3七桂成に▲同角成で駒損しましたが、金の代わりに馬を引きつけて先手陣は逆に堅くなりました。「馬の守りは金銀3枚」という格言もあるように、自陣の馬は強いのです。
【第4図は△1二香まで】
第4図は藤井システムの序盤戦です。このまま△1一玉~△2二銀を許してしまうと穴熊が完成してしまいます。その前に▲2五桂と攻めるのが作戦の骨子。△4二角に▲4五歩と、角のラインを生かして攻めていきます。△1一玉なら▲4四歩△同銀▲4五歩から攻めて先手好調です。後手は玉を角の筋から外す受けがなく、先手の攻めは見た目以上に迫力があります。「角筋は止めにくし」という格言もあります。藤井システムや急戦矢倉など、角のラインに玉を囲う場合にはこういった攻めには注意が必要です。
【第5図は△2八角まで】
相振り飛車の序盤戦から、後手がスキありとばかりに角交換から△2八角と打ち込んで香得を狙ってきた局面です。一見すると駒損が避けられないようですが、ピッタリの切り返しがあります。第5図から▲4一角が好手。後手は飛車を逃げるしかありませんが、仮に△2二飛だと▲5二角成△同金に▲1八金で角の捕獲に成功します。以下△1九角成▲同金で、金香交換で先手が駒得になりました。香を狙って角を打ち込む筋は実戦でも多々ありますが、金や飛車を打たれてしまうのには気を付けましょう。局面によっては角を合わせて受ける形もあり、真のスキであることはそうそうありません。
角は存在そのものがにらみを利かせる強力な駒です。相手の立場で言うと、絶好のポジションにいる角や馬に働きかける手が好手になる場合もよくあります。急所で威張っている角や馬に困る前に、追い払えるような将棋の作りを目指しましょう。
逆に好位置に安定させることができれば、局面の急所を押さえることができます。角をうまく使って難戦をひっくり返せたら、気持ち良いことこの上ないですね。
ライター渡部壮大