佐藤天VS千田。いま最も勢いのある二人の初手合わせ。叡王戦決勝三番勝負の展望(前編)

決勝は佐藤天と千田

羽生善治九段(三冠)の参戦が社会的にも話題を呼んだ第2期叡王戦もいよいよ大詰め。決勝は現名人の佐藤天彦九段と、関西若手の千田翔太五段との対戦になった。勝ちまくっている二人が初手合いというのはやや意外だが、人類代表を懸けた三番勝負は、今最も勢いのある二人の対戦といえるだろう。

佐藤は春の名人戦で初のタイトルを獲得した。トップ棋士は当たりが厳しくなるはずだが、勢いは止まらず名人獲得後も勝ちまくっており、今期は8割近い勝率だ。叡王戦では安定した内容で八段予選(組み合わせ時は八段)から勝ち上がり、準決勝では羽生の攻めを入玉でかわしきった。

千田は通算勝率が7割を大きく上回り、将来を嘱望される若手棋士の一人だ。今期は勝率8割超えで、対局数、勝ち数、勝率、連勝ともトップを争っている。今期は棋王戦でも勝者組決勝まで勝ち上がる活躍を見せている。

ただ、デビュー間もない王位戦で挑戦者決定戦敗退。その後も加古川青流戦、今年に入ってのNHK杯戦、YAMADAチャレンジ杯と、いずれも決勝で敗れている。あと1つがなかなか遠い結果となっているが、そろそろ初の棋戦優勝にも期待したいところだ。

予選決勝の青嶋戦

第1図は千田が印象に残る将棋として挙げた、青嶋未来五段との五段予選決勝だ。角換わりから後手の青嶋が右玉に構えて、待機戦術に出る。対して千田は自陣角からうまく打開を図り、桂得に成功して形勢をリードした。

【第1図は82手目△5七馬まで】


ここで飛車を逃げているようでは後手も飛車を成り込んで混戦になるが、▲8四角が厳しい攻め。△6八馬なら▲7三桂成△7一玉▲7二歩△同銀▲同成桂△同玉▲7三銀以下の詰みがある。実戦は△8三金と埋めたものの、▲6四銀の強手が炸裂。以下△8四馬▲7三銀打△同金▲同桂成△同馬▲同銀成△同玉▲7四歩(第2図)から一気に寄せきった。

【第2図は93手目▲7四歩まで】


佐藤に千田の印象を尋ねると「力強い棋風の力戦派という感じです。将棋ソフトを使った研究に特に力を入れているイメージがあります」と答えが返ってきた。コンピュータの研究を基にした新しい手が三番勝負で見られるかもしれない。

後編では準決勝の模様と、決勝三番勝負の戦型について展望する。

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